生活習慣病の予防・改善のカギは身近な食材にあり!

生活習慣病の予防・改善のカギは身近な食材にあり!

アブラナ科野菜の辛み成分に注目

私たちが毎日食べる食品の中で、生活習慣病の予防や改善に役立つ食品の機能性について研究が行われています。
例えば、大根やカブなどのアブラナ科の野菜に含まれる辛み成分の「イソチオシアネート」という化合物には、糖尿病などの原因となるインスリンの作用不足を改善する2つの働きがあることがわかってきました。
働きの1つは抗酸化作用です。肥満が生活習慣病につながるのは、肥満によって脂肪がたまりすぎた脂肪細胞では、酸化ストレスが上昇してインスリンの効きが悪くなり、その結果、血糖値が上がって代謝異常を引き起こすためです。イソチオシアネートは体が本来持っている抗酸化酵素を助ける作用があるので、脂肪細胞が受ける酸化ストレスを抑制できます。

インスリンの代わりに働く?

もう1つの働きは、イソチオシアネートそのものがインスリンに似た作用をするというものです。血糖値が正常に保たれるのは、骨格筋などの筋肉にインスリンが作用することで、筋肉細胞が血液中の糖を適切に利用するためです。糖尿病の場合、インスリンが効きにくいインスリン抵抗性の状態になり、筋肉の糖利用率が低下してしまいます。実験では、糖の利用率が低下した筋肉の培養細胞にイソチオシアネートを作用させると、培地中の糖を利用することがわかりました。つまり、イソチオシアネートにはインスリンと同様の働きがあると考えられます。

食べ合わせで効果がアップ?

イソチオシアネートにインスリン同様の作用があるとはいえ、それは偶然のたまもので、それぞれ全く別の物質です。したがってイソチオシアネートには糖尿病改善にプラスに働く作用だけでなく、マイナスの作用が内包していることも否定できません。マイナスの作用があるとしても、食品として摂取する程度なら健康に影響はありません。しかし、食べ合わせなどでマイナスの作用を打ち消すことができればより効果が上がるものとして、研究が進められています。

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先生情報 / 大学情報

岩手大学 農学部 応用生物化学科(令和7年度から  食料農学科所属予定) 教授 伊藤 芳明 先生

岩手大学 農学部 応用生物化学科(令和7年度から 食料農学科所属予定) 教授 伊藤 芳明 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

栄養化学、食品機能学

先生が目指すSDGs

メッセージ

栄養化学という領域は、食べ物がどのように健康や病気に関わるのかを研究する学問です。食品や体の仕組みに興味があるなら、ぜひ栄養化学に来てほしいです。私自身はもともとホルモンなどの生理調節機序や医学的な分野に関心がありました。食事タンパク質の栄養バランスと体の成長との関わりを内分泌因子の作用から研究している研究室に入ったことがきっかけで、栄養化学に進みました。農学部でも食品や栄養の必要性や代謝調節機序の研究から、それらと健康や疾患との関わりに関する研究ができるということをぜひ知ってほしいです。

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岩手大学は、人文社会科学部、教育学部、理工学部、農学部の4学部からなり、文理バランスの取れた総合大学です。
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