宇宙探査機に搭載する観測装置の開発とは

宇宙探査機に搭載する観測装置の開発とは

宇宙空間の電波を調査する機器を開発

宇宙空間の電磁波環境を調査するためには、専用の観測機器が使われています。必要な観測機器は、目的に応じて開発されます。アンテナ・受信機を設計・開発し、回路シミュレーションを行い、試作、動作の検証などを経て完成するのです。こうして完成した観測機器は、JAXA(宇宙航空研究開発機構)のロケットなどに搭載して打ち上げられます。そこから得られたデータを解析することによって、宇宙空間中の電波に関わるいろいろなことがわかります。

シミュレーションと手作業を駆使する

観測機器はロケットが発射される際の強烈なG(重力加速度)や、宇宙空間での激しい温度変化など、過酷な状況でも壊れることなく正確に動作させる必要があります。そのため、唯一無二の機器を、既存の製品に手を加えて宇宙仕様に改良するか、新たにゼロから製作する必要があります。
例えば、宇宙空間で効率よく電波を計測するためには、できるだけ大きなアンテナを持って行く必要があります。そこで、大きなアンテナを小さく収納できるように、折り紙を使って閉じたり広げたりする過程をシミュレーションするなどの実験を繰り返し、その仕組みを考えます。既存のものを組み合わせることもあれば、ドリルやノコギリを使っての切断やハンダ付けなど、手作業で作られることもあります。手作業で得られたノウハウをどう噛(か)み砕いて理論や数値に置き換えていくかということも重要です。

解析したデータを開発に生かす

観測機器は、ほかの協力研究機関の研究者たちからも「どのようなデータがどのくらい必要なのか」といった要望を聞き、開発が進められます。そして観測機器が無事、宇宙空間で動作すると、データが得られ、解析することができます。解析されたデータは観測機器の開発側へもフィードバックされ、新たな開発に生かされていきます。
このように、宇宙空間における電磁波を調査するという目的のため、最適な観測機器の開発が日々行われているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

富山県立大学 工学部 電気電子工学科 教授 石坂 圭吾 先生

富山県立大学 工学部 電気電子工学科 教授 石坂 圭吾 先生

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電波工学、電子工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

現在、日本のメーカーでは、製造・開発それぞれが分離し、製造部門が海外にあるケースが少なくありません。だからこそ、その間のポジションに立てる人材、つまりハードウェアもソフトウェアもわかる人材が重要です。ですから、学生時代にハードウェア・ソフトウェアの両方を経験してほしいと思います。
自分で設計し、開発した搭載機器が宇宙空間で観測したデータを手にしたときの喜びをぜひ味わってもらいたいです。そして、得られたデータを解析して、宇宙空間の未解明の現象を解き明かしていきましょう。

先生への質問

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