ナノテクノロジーの多様性
ナノテクノロジーで何ができるのか
ナノテクノロジーとは、10⁻⁹m(nm)という非常に小さな材料を利用する超微細技術です。小さくすることで今まで「できない」と思われていたさまざまな化学反応、物理現象が実現します。例えば、化学反応を起こさないと思われている「金」も、ナノサイズの粒子になると触媒として機能することが報告されています。また、よく知られた「オームの法則」も、量子力学が支配するナノの世界では電流-電圧特性は必ずしも直線にならず、階段状になります。こういった事象を応用した装置やコンピュータの開発も進められています。あるいは、ピンポイントで薬を患部(細胞)に送り込むドラッグディバリーシステムといったように、工学から医療分野に至る幅広い分野での展開が期待されています。
カーボンナノチューブとは
このナノテクの分野で、最も注目を集めている材料の一つがナノサイズの炭素(ナノカーボン)です。従来、炭素の結晶構造は炭素原子が亀の甲の形で層状に積み重なっているグラファイト構造(炭など)か、ダイヤモンド構造の2種類しか知られていなかったのですが、1985年にサッカーボール状の構造を持ったC60フラーレンが見つかりました。そして、1991年日本の飯島澄男氏が、炭素の同素体であるカーボンナノチューブを発見しました。このカーボンナノチューブは、グラファイトのシートが筒状になったもので、単層のものと多層のものがあります。単層のものは、その直径や巻き方によって半導体になったり、金属になったりと性質が異なります。現在カーボンナノチューブの価格は、高品質な単層のチューブではたった1gで何万円もします。2009年3月の金の価格が1gあたり3100円程度なので、まだまだずいぶん高額です。現在は、液晶に代わる省エネルギー型の新しいディスプレイ、バックライト不要の電界放出型(FED)ディスプレイとしてカーボンナノチューブを利用した開発が進んでいます。
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