摂取したタンパク質を体内で適切に機能させるための臨床栄養学
筋肉量が減る原因は糖質不足
食べ物に含まれるさまざまな栄養素のうち、糖質、脂質、タンパク質は三大栄養素と呼ばれ、人間が生きていくために欠かせないエネルギー源です。このうちタンパク質は、筋肉や臓器など体の主要な成分を構成する大事な栄養素ですが、糖質が不足して十分なエネルギー供給ができなくなると、それ自身をエネルギー源として使うために燃やされてしまいます。体内で、タンパク質として機能する栄養素はタンパク質だけです。糖質不足が原因でタンパク質が減ってしまうと、筋肉や臓器をつくる本来の機能を果たせなくなり、筋肉量も減ってしまうのです。
糖質は、脳や赤血球の活動に欠かせない栄養素です。タンパク質をエネルギー源ではなく体をつくるという本来の目的に使うためにも、糖質の十分な摂取が必要です。
エネルギー量の適正値を算出するには
体内で必要なエネルギーと栄養素の量を算出するには、疾患の状態や手術の有無、個人の筋肉量や脂肪量なども考慮する必要があります。臨床栄養の現場では、タンパク質を効果的に機能させるために必要な、タンパク質以外(糖質・脂質)のエネルギー量の適正値は、NPC/N比(非タンパクカロリー/窒素比)という指標を用いて算出します。
治療の終わりは、栄養管理の始まり
栄養管理は、病気やけがの治癒を促進するためだけでなく、再入院を防ぐためにも大切です。以前の栄養設定は、エネルギーを重要視したカロリーベースが優先されてきました。現在では、筋肉や臓器をつくるタンパク質が体内でその役割をきちんと果たせるように、糖質や脂質を担保した栄養設定の重要性が指摘されています。
患者さんにとって退院は治療の終了ではありません。栄養管理は入院中から退院後まで継続的に行われなければなりません。病気によって失われた栄養素を取り戻す課題と向き合う、新たな生活の始まりです。退院後、自宅の食事でどの栄養素をどれだけ摂取すればいいのか、臨床栄養の観点に基づいた情報提供が、医療行為の一環として行われることが期待されています。
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先生情報 / 大学情報
山形県立米沢栄養大学 健康栄養学部 健康栄養学科 教授 寒河江 豊昭 先生
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