生態系を守る農業で、人の暮らしを守る

生態系を守る農業で、人の暮らしを守る

世界の人口増加を支えてきた農業と農学

2019年の世界人口はついに75億人に達し、50年前から約40億人も増加しました。この急激に増加した人口を支えてきたのは、食料を生産する農業であり、品種改良、化学肥料・農薬の開発、農業機械の開発などの農業技術の進歩です。2050年代には世界人口は100億人に達すると予測されている今、食料生産を担う農業はますます重要になっています。

地球システムの状態は限界を超えている!?

その一方で、農業で使用される過剰な農薬や化学肥料は生態系をかく乱し、環境を汚染しています。地球の生物多様性の減少(多様な生物の絶滅)や窒素などの物質循環は地球のキャパシティを超えているとされています。私たちは、生態系が供給するサービス(空気、水を浄化する機能など)なしでは生活することはできず、食べものがなくても生きていくことができません。

生態系を守る農業を発展させる

私たちが安心して暮らしていくためには、生態系を破壊しないことと高い生産性を両立させた農業システムが不可欠です。例えば、農薬と化学肥料を使用しない「有機農法」では、水田中の水生生物が増加し、水生ミミズが土壌を耕すためにイネの生産量を増加させることがわかってきました。例えば、佐渡では一度は絶滅した朱鷺(トキ)を自然復帰させるために、冬期湛水や農薬を減らした農法によって朱鷺のエサとなる生物が多くなる水田づくりが行われています。消費者は、この「生きものを育む農法」で生産されたお米を購入することによって朱鷺の保護とそれに取り組む生産者を応援することができ、それを通じて朱鷺や生態系を守ることに貢献できます。農業は、食料生産以外にも洪水防止、水の浄化、景観・伝統文化の保全など、「生態系サービス」と呼ばれる多様な機能や価値を持っています。このような「生態系にやさしい農産物」を通して農業の価値を生産者と消費者の間で共有することができれば、生態系と調和した農業の発展と農村・都市の両方での安心な暮らしが両立するのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

新潟食料農業大学 食料産業学部 食料産業学科 アグリコース 教授 伊藤 豊彰 先生

新潟食料農業大学 食料産業学部 食料産業学科 アグリコース 教授 伊藤 豊彰 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

土壌学、栽培学、環境科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私は高校時代から生物学が大好きで、生物学をめざした大学受験を早い時期から意識していました。しかし、受験を目標とした勉強だけでなく、人生論などのいろいろな本もたくさん読んだ記憶があります。人は高校生、大学生、社会人と成長にともなって全く別の人間というくらいに精神的には変化していきます。高校生という感受性の強い時期だからこそ、その後の人生を豊かにする本に出会えると思います。あなたも、受験とは直接関係がなくても、興味があることを大切にして、いろいろな分野の本を読んでみてはいかがでしょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?

新潟食料農業大学に関心を持ったあなたは

“Farm to Table to Farm”は「農場から食卓へ、そして農場へ」という意味です。食物は、農場で生産されてから多くの人の手を経て食卓に届けられ、この流れを「フードチェーン」とよび、農場から人々の食卓まで、フードチェーン全体をつかさどる産業を食料産業とよんでいます。本学では、新しい食料産業を作り出すために不可欠な科学(サイエンス)、技術(テクノロジー)、経済活動(ビジネス)を一体的に身につけます。日本の農業を変え、さらに世界をリードする新しい食料産業をともに生み出していきましょう。