講義No.08854 地球科学

花崗岩から大陸の形成・進化を探る

花崗岩から大陸の形成・進化を探る

大陸を作る主要な岩石の花崗岩

建築物などの石材として身近な花崗(かこう)岩は大陸を作る主要な岩石です。したがって、花崗岩の研究は大陸の形成過程や地球史46億年における大陸の進化の解明につながります。

水の惑星、地球ならではの花崗岩

花崗岩のでき方は場所によりさまざまですが、日本を例にみてみましょう。日本には海洋プレートが沈み込んでおり、このときに海水の「水分」が潜り込みます。これが重要です。水分は岩盤の融点を下げる添加剤となり、地下のマントルを溶かしてFeやMgに富む玄武岩マグマを発生します。このせいで日本は火山国なわけです。一方で、一部のマグマは噴出せずに地下30kmあたりの日本の下部に張り付きます。この張り付いた玄武岩は、マントルから追従してくる玄武岩マグマより熱と水分をもらいながら再び溶けるのです。この玄武岩の溶融でできたマグマが花崗岩になると考えられています。ただし、花崗岩は玄武岩のようにいつでも形成するわけではなく、あるとき大量に作られて大陸を生産しているようです。まだまだ謎が多いのです。
花崗岩には水分を含む鉱物(黒雲母や角閃石)が普遍的に含まれており、そのでき方に「水」が重要とわかります。地球では花崗岩が大陸の主要岩石としてどこにでもみられますが、ほかの惑星ではほとんど見つかっておらず、水の惑星にしかない特別で面白い岩石なのです。

人々に役立つ地球科学

地球科学でも特に地質学(Geology)は社会や経済にとても重要です。社会の基盤をなす道路・鉄道・電力施設・ダムの整備、人々に計り知れない大ダメージを与える土砂災害・火山噴火・地震・津波への対策、そして経済発展の鍵を握る天然資源の獲得、これらへの挑戦には最先端の地質学が欠かせません。理学分野でありながら、その知識や調査技術は、地盤調査、防災調査、資源探査に直結します。地球科学は過去を追いかけて地球の仕組みを明らかにすると同時に、その知見で人々の未来を支える学問でもあるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

島根大学 総合理工学部 地球科学科 教授 亀井 淳志 先生

島根大学 総合理工学部 地球科学科 教授 亀井 淳志 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

地球科学、地質学、岩石学、地球化学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私の専門は地球科学の中でも地質学・岩石学です。研究では「大陸を現在生産している日本列島」や「約40~5億年前の古い大陸でできた南極・インド」などを調査し、岩石の化学分析を通して大陸の成長過程や進化の歴史を探っています。
地球科学は理学分野ですが、その知見は自然災害や資源形成の理解に不可欠で人類社会や経済発展に重要です。例えば当学科卒業生の半数以上は専門を生かした地質系・資源系の企業・官公庁で活躍し、災害や探査に取り組む専門家として人々に役立っています。ぜひあなたも、地球科学を学んでみませんか。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

島根大学に関心を持ったあなたは

島根大学は、学術の中心として深く真理を探究し、専門の学芸を教授研究するとともに、教育・研究・医療及び社会貢献を通じて、自然と共生する豊かな社会の発展に努めています。とりわけ、世界的視野を持って、平和な国際社会の発展と社会進歩のために奉仕する人材を養成することを使命とします。この使命を実現するため、知と文化の拠点として培った伝統と精神を重んじ、「地域に根ざし、地域社会から世界に発信する個性輝く大学」を目指すとともに、学生・教職員の協同のもと、学生が育ち、学生とともに育つ大学づくりを推進しています。