そのダイエット、必要ないかも? 実は違う日本と欧米の肥満
日本と欧米では、肥満の基準がちがう?
体脂肪が過剰に蓄積した肥満の状態は、さまざまな病気を引き起こします。しかし、実は日本と欧米では、肥満の基準が違っているのです。欧米では、体重(kg)を身長(m)の二乗で割ったBMI値が30以上を肥満と定義し、肥満の人は人口全体のおよそ30%を占めます。ところが日本ではBMI30以上の人は、わずか2~3%しかいません。そこで便宜的に人口30%を対象とするために、日本ではBMI25以上の人を肥満として線引きし、減量するよう指導しているのです。
少しぽっちゃりさんが、一番長生き!?
しかし、2011年に「BMIと死亡リスクの関係」を全世代にわたって男女35万人を調査したところ、BMI25付近が最も死亡率が低いことが判明しました。高齢者などが高血糖・高血圧・高コレステロールなどの改善のために減量することは効果がありますが、他方でBMIを下げようと減量することで免疫能力が落ちて、感染症にかかりやすくなったり、がんの発生率が高まったりすることも知られています。過度な肥満を除けば、高齢者が減量することには合理性がないのです。
また、若く健康な人が減量しようとしても、運動によって消費されるカロリーが意外と少ないこともわかっています。つまり運動が嫌いな人や運動習慣のない人が無理に運動しても、続かない上にあまり効果がないのです。そこで食事制限を柱に、階段の上り下り・歩幅を広くする・家事をこなすなどの日常生活の動作エネルギー消費「NEAT(非運動性熱産生)」を増やす取り組みが注目されています。
必要のないダイエット
反対に、低体重を心配されるのが20代・30代の女性です。この層は食糧不足の終戦直後よりもBMIが低く、必要のないダイエットをすることで月経異常・摂食障害・胎児への影響などが懸念されています。スリムな体が美しいという先入観や偏見に気づき、正確な情報を得ることも健康のために必要なことなのです。
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椙山女学園大学 看護学部 看護学科 教授 早川 幸博 先生
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