「インクルーシブ保育」の実現に向けて
求められるインクルーシブ保育
保育園や幼稚園、こども園などでは、遊びや友達との関わりといった、子どもの発達・育ちに必要な経験が盛り込まれた保育計画をもとに保育が行われています。現代の保育においては、こうした保育計画を立案する際に、障がいがある子どもや外国にルーツがある子どもといった多様な状況にある子どもすべてを含んだ「インクルーシブ保育」を念頭に置いた計画が求められるようになりました。子どもの健全な育ちを支えるには、どの子どもも尊重され、子ども一人ひとりの個性が生かされることが大切です。多様な状況にある子どもと向き合うために、保育者に求められる専門知識や保育技術も多様化してきています。
心理職が保育の現場で得た気づき
ある園に、発達障がいとみられる子どもがいました。Aちゃんは、教室から出て行くことが多く、お昼の時も椅子から離れて歩き回り、食事をあまり取らない姿がみられました。自治体から派遣されていた心理職は、保育者や保護者と対話を重ねながら、園での子どもの様子を観察しました。すると、食事中に歩き回るという行動の原因は、背筋が柔らかいという身体面の特徴から、椅子に座り続けることの難しさにあることが分かりました。そこで椅子に滑り止めマットを敷いて座りやすくしたところ、Aちゃんが食事中に歩き回ることはなくなり、食欲も回復しました。
保護者を支援する子育て支援の視点
保育者が保育の現場で関わるのは、子どもだけではありません。保育所保育指針や幼稚園教育要領などには、保護者に対する子育て支援についても明文化されています。子どもの健全な育ちを支えるためには、保護者との相互理解や保護者の状況に配慮した個別の支援が欠かせません。また、不適切な養育などが疑われる家庭への支援では、保育者以外の専門職や、自治体との連携が求められています。保育者は、日々子どもと接する保育の力以外にも、保護者とのコミュニケーション力や外部の専門職との連携力が求められる職業です。
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先生情報 / 大学情報
江戸川大学 メディアコミュニケーション学部 こどもコミュニケーション学科 教授 村上 涼 先生
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