技術力よりも大切? 経営者に必要なダイナミック・ケイパビリティ
多国籍企業は従来のままというわけにはいかない
従来の多国籍企業は、本社がトップにあり、その下に現地の企業が配置されていることが普通でした。しかし近年では、上下関係よりも、ヨコのつながりを重視するネットワーク型組織が増えています。市場の変化に応じ、現地の企業に素早く資源を供給することが本社の役割です。一方で、消費者に合わせた売り方を講じるためのマーケティングや販売のノウハウは、本社よりも現地の企業の方が優れています。
トップの指示を待つだけの企業は成長できない?
中国に進出している複数の日本企業を継続的に調査したところ、安定した成長を成し遂げた企業と業績がふるわない企業の違いが見えてきました。成功している企業は、現地のリーダーを中心とした経営チームが本社から権限を委譲されており、現地の環境変化に合わせて瞬時に戦略を変更できるようになっていました。一方で、競争力を維持できなかった企業は、市場に変化が起こるたびに本社に報告し、指示を待っていました。その結果、市場が変動するスピードに間に合わず、対応が手遅れとなっていたのです。海外の企業は日本に比べると技術力などが十分ではない場合もありますが、とりあえずやってみるというスピード感に優れています。
未来を左右するダイナミック・ケイパビリティ
経営学には、持続的な競争優位性に必要な能力として、「ダイナミック・ケイパビリティ」という考え方があります。急速に変化する環境に合わせ、手持ちの資産、資源と知識を再配置・再構築する能力のことです。例えばアップル社のような世界的な企業も、今後も創業者のスティーブ・ジョブズの残したものを引き継いで強い競争力を維持できるとは限りません。
リーダーを中心として環境の変化を敏感に感知し、資源を再配置・再構築して企業を変革させることができるか、という点が重要視されています。経営陣にダイナミック・ケイパビリティが備わっているかどうかは、企業が成功し続けるための決め手のひとつなのです。
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先生情報 / 大学情報
帝京大学 経済学部 経営学科 准教授 楊 錦華 先生
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