見えない「音・振動」を可視化して、製品開発に役立てる

見えない「音・振動」を可視化して、製品開発に役立てる

機械から出る音や振動を抑える

機械類から出る音や振動は製品の性能に影響するため、できるだけ抑えるように設計されています。例えば、パソコンなどの小型の機器に入っている冷却ファンは、ファンが動く音そのものに加え、振動がボディに伝わって大きな音になる「共振」という現象が生じやすくなります。また、冷却ダクトでは空気も共振して「共鳴」という現象も生じやすくなります。ものには固有振動数があり、ファンの振動がボディやダクトの固有振動数と重なると、共振や共鳴が起きて大きな音になるのです。
そのため、ファンと共振を起こさないような素材や構造を使ったり、「ヘルムホルツ共鳴器」を組み込んだりして、音を抑えています。

騒音を可視化

音や振動が目に見えないことも、騒音対策を難しくしています。そこで、音源の場所を可視化する研究も進んでいます。
例えば、空気の流れによって起こる「空力騒音」を可視化する技術があります。空力騒音とは、風が棒を通過したり穴を通り抜けるなど、流れの振動で音が発生する現象です。流れ中の一点の風速の変動を計る仕組みを使ってたくさんの場所を測り、発生している音との関係を調べると、どのあたりで風の音が強いかが可視化でき、対策が取りやすくなります。

振動現象で材料の性質を調べる

一方で、振動を使って、材料の剛性(変形のしにくさ)を示す「ばね定数」を測る研究もあります。従来は材料を引っ張って、その力と伸びの関係で調べていました。しかし、材料の固有振動数で振動を与えて共振の仕方を見ることで、材料の「ばね定数」を測る方法が開発されました。
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)など繊維を含む材料は、「異方性材料」と言い、含まれている繊維の向きによってばね定数が変わるため、いろいろな方向での引っ張り検査が必要です。振動を与える方法なら、その手間がいらず、材料を壊すことなく、かつ従来の方法よりも精度が高いことがわかり、製品設計に役立つと期待されています。

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先生情報 / 大学情報

室蘭工業大学 理工学部 創造工学科 准教授 松本 大樹 先生

室蘭工業大学理工学部 創造工学科 准教授松本 大樹 先生

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機械力学、音響工学、流体工学、機械工学

メッセージ

私は高校生のときは野球に夢中であまり勉強しなかったのですが、大学に入ってから勉強が面白くなりました。大学では、物事の根本から考えるような授業が多く、わからなかったことがわかっていくプロセスがうれしかったのです。今も、ある現象の根本原因とか、なぜそうなるかを知りたいという動機で研究を積み重ねて、結果が出ることに魅了されています。あなたも、知りたいという気持ちを持って諦めずに一つ一つ積み重ねていけば、いつの間にかできるようになっていたり、やりたいことが見つかったりすると思います。

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北海道の工業都市で「ものづくりのマチ」である室蘭市に所在する室蘭工業大学は「地域貢献」を大きなキーワードとして掲げ、産業界で活躍しつづける幅広い理工系人材を育てるべく教育改革を行い、工学部から理工学部へと大きく進化しました。ものごとの本質をつかみ、探究心を養うべく理工学教育を全学的に充実させ、更にICTやAIの本質を理解して使いこなし、もの・価値づくりに貢献できる学生を育てる工業大学ならではの情報教育を推進しています。確かな研究力をベースとした教育力をキーワードとしている本学講義を体感ください!