「墓参り」を通して知る、人と人のつながり
「家」を通して見える人のつながり
「民俗学」とは人間の生活や文化、社会を取り扱う学問です。調査対象を直接見たり、当事者から話を聞いたりすることが重視されている分野です。社会における人と人とのつながりは民俗学における重要なテーマの一つですが、「家」を調べることで、現在のつながりだけでなく祖先とのつながりも知ることができます。例えば日本の伝統的な家は代々「本家」が守られ、そこに入らない人たちが「分家」をつくります。しかし、中国では長男、次男、三男とほぼ平等に相続をし、それぞれが「家」をつくることが一般的です。
墓参りの違い
日本では本家の墓は本家の人たちだけ、分家の墓は分家の人たちだけが参るのが一般的です。一方中国では夫婦ごとに1つの墓がつくられますが、先祖の中に有力な人がいる場合、そこに一族が参ることがあります。日本と中国の両方の影響を受けている沖縄にも本家や分家はありますが、沖縄は一族が強くつながっており、「門中(もんちゅう)」という集団を形成します。お盆や正月に門中が集まり、先祖が一緒に祭られている大きなお墓に参ります。こうした先祖祭祀(さいし)のあり方は文書などに正確に記録されることは少なく、直接墓を見て、現地の人たちに話を聞くことで明らかになります。
新しい「家」のあり方
現代の日本は本家や分家といった考えやそのつながりが薄れつつありますが、その一方で新たな家のあり方も生まれています。愛媛県の二神島には、そこを起源とする二神という姓の家があり、その姓を持つ人たちが日本全国に散らばっています。20年ほど前から彼らが連絡を取り合うようになり、具体的な親族関係は不明であっても定期的に集まっては、お墓参りや宴会を行っています。このつながりが子孫たちに受け継がれていくのかはまだわかりませんが、似たようなケースはほかにも見られます。時代の流れとともに生ずる、こうした家のあり方の変化を調査し、人々の考え方を同時進行で記録していくことも民俗学の大切な意義なのです。
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先生情報 / 大学情報
神奈川大学 国際日本学部 歴史民俗学科 教授 小熊 誠 先生
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