人口地理学でわかる人間と地域のこれからのあり方
人間の営みに関わる地理学の研究
地理学という学問には、大きく分けて、自然地理学と人文地理学という二つの系統があります。自然地理学とは、地形や気候などの自然環境や動植物の分布などを主に扱う学問です。一方、人文地理学とは、人間の社会構造や経済活動、歴史、文化、宗教、交通、人口分布など、人間の営みの地域的な特徴を研究する学問です。
数字の背後に隠されているものを読み解く
人文地理学の中でも、人口分布や構造にまつわる研究を行う地理学は、人口地理学と呼ばれています。人口地理学の研究では、ある地域における人口を、性別・年齢別に把握したり、さまざまな指標の地域による違いを明らかにすることから始めます。例えば、日本の社会では少子高齢化が進んでいると言われていますが、その度合は、国内の各地域によって異なります。地域ごとの人口とその内訳の分布や増減を調査し、統計に現れる数字の背後に何が隠されているのかを読み解くことによって、その地域にどのような特徴があるのか、どのような現象が起こっているのかを把握できるようになります。
身の回りにある問題を解決するきっかけに
日本では従来、「高齢者は住み慣れた地域で住み続け、引っ越しはしない」と考えられていました。しかし近年、これを覆す状況が生じています。地方圏で孤独化した高齢者が大都市圏の子どもの居住地へ移動したり、大都市圏内でも、郊外からより生活の便利な都心部へ移動したりする場合が見られます。こうした新しい現象も、統計で得られた数値を見ながらじっくり考え、どの地域になぜ人(高齢者)が引きつけられるのかを明らかにできれば、高齢期の生活に何が重要なのかを理解し、また、病院や介護施設の需要予測などに応用することが可能です。
このように、人口地理学の調査と研究によって得られた成果は、私たちの身の回りにあるさまざまな問題を解決するきっかけになりうるのです。
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先生情報 / 大学情報
神奈川大学 人間科学部 人間科学科 教授 平井 誠 先生
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