商店街に子どもの遊び場を作ってみた ある教育心理学の実践研究
失われる遊び場
「ボール遊びは禁止」「5人以上で遊んではいけません」、近年、公園にはこうした注意書きが目立ちます。日本では、子どもの遊び場が失われています。加えて、例えば地域の大人が子どもに声をかけると「声かけ事案」として警察に通報されたり、公園で少し騒いでいると役所にクレームが入ったりと、子どもをとりまく社会も変化しています。安全の確保や地域への配慮は必要ですが、子どもの遊び場はいつの時代にも不可欠です。
子どもの心を起点に考える
教育心理学のある実践研究では、商店街に子どもが遊べるスペースを設け、子どもの遊び場のあり方を考えています。この遊び場は地域の子どもが自由に出入でき、大人が決めた遊びではなく、好きな遊び方で自由に遊ぶことができます。子どもと子ども、子どもと大人が一緒に過ごす中ではさまざまな現象が起きます。子どもの心を起点にそれらをとらえ、心理学的なアプローチで関わっていくことが研究の目的です。
例えばある子どもが周囲に暴言を放った場合、その行為を叱るのではなく、質問を投げかけます。遊びがうまくいかずイライラしたのか、「一緒に遊ぼう」が言えず気を引きたかったのかなど、心の動きを一緒に整理していきます。もし、やっていた遊びのルールに問題があったことがわかれば、みんなが楽しく遊べる方法を共に考えます。
子どもの生きやすさを守る
多くの子どもは、なんらかの悩みを抱えています。大人にはささいに思えることも、子どもにとっては不安や葛藤は小さくありません。子どもが子どもらしくいられる遊び場は、そんな悩みを発散したり、ほぐしたり、あるいはみんなで分担するという機能も備えています。また、この商店街のケースのように、子どもがいきいきと遊ぶ場を街中に生み出すことは、周囲の大人が子どもを優しく見守る雰囲気づくりにもつながります。社会の不寛容さが指摘される中で、こうした遊び場には、子どもの生きやすさを守り、地域の変化を促す力が秘められているのです。
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先生情報 / 大学情報
北九州市立大学 文学部 人間関係学科 准教授 山下 智也 先生
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