私たちが感じる漠然とした不安とうまく付き合うには

私たちが感じる漠然とした不安とうまく付き合うには

不安はなくすもの?

不安は対象がはっきりしない漠然とした怖れの感情です。不安というと、失敗したらどうしようといった心配な気持ちが思い浮かびますが、実は体や行動にも変化があらわれます。不安が生じると、自律神経の交感神経が活発に働き、血圧や心拍数が上昇し、呼吸が速く浅くなり、筋肉は硬くなります。また、行動できなくなるといった変化もあらわれます。
では、不安はなくしたほうがよいのでしょうか。不安をゼロにする必要はなく、行動ができるレベルまで不安を低めることが大切であることを、心理学は示しています。

ACTで不安を低める

学業やスポーツなどの成績を向上させるために重要なのは、1)事前準備を十分に行うこと、2)不安をしっかりと行動できるレベル(最適レベル)にすることです。不安を最適レベルにする方法に、ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)という心理療法があります。
ACTでは、まず不安を低めながら、自分の気持ちを客観的に眺めて、すべての気持ちを受け入れます。その中には、不安のような否定的な気持ちもありますが、前向きな気持ちもあります。次に、これらの気持ちの中からどれを選択すれば自分らしい人生を歩んでいけるかを考えて、一つを選択します。選択したらGo! あとは実行あるのみです。どのようにすれば、不安を最適レベルにできるかは、次で説明します。

マインドフルネス呼吸法で不安を最適レベルにする

マインドフルネス呼吸法は、自分の心を客観的に眺め、不安を最適レベルにする方法です。これは、背筋を伸ばして体の力を抜いた状態で、ゆったりと自分のペースで呼吸しながら、呼吸やお腹に意識を向ける方法です。ゆったりと呼吸していくと、頭の中になにか雑念が浮かんできます。その雑念を「いい」「悪い」「考えてはいけない」などと一切考えません。その雑念に気づけばOKです。雑念に気づいたら、再び呼吸やお腹に意識を戻してゆったりと呼吸を続けます。呼吸が落ち着くと、それにともない不安が低まり、最適レベルにすることができます。

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宇部フロンティア大学 心理学部 心理学科 教授 桾本 知子 先生

宇部フロンティア大学 心理学部 心理学科 教授 桾本 知子 先生

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健康心理学、臨床心理学

先生が目指すSDGs

メッセージ

高校時代や大学入学後に、夢中になれることを見つけられたら幸福ですが、見つけられない人もいます。そのような人は、ひとまず何事もやってみることが大切です。
毎日の生活で、やるかやらないかを選択する場面に頻繁に出合います。そのようなときは、ひとまずやってみる! そうするとそれが自分に向いていることなのか、やりたいことなのかがはっきりしてきます。やってみずに選択肢から外すのとでは大きく違います。まず一歩行動していけば、結果が積み重なり、自分が豊かになりますし、将来の方向性も見えてくるはずです。

先生への質問

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宇部フロンティア大学に関心を持ったあなたは

宇部フロンティア大学は明治36年創立の伝統を誇る学校法人香川学園が母体で現在、幼稚園、中学校、高等学校、短期大学部、大学、大学院、大学院附属臨床心理相談センター、大学附属文京クリニックおよび宇部環境技術センターからなり、山口県の教育・研究の一大拠点として地域への人材供給を含む地域貢献に取り組んでいます。大学では、学園の創始者(香川昌子)の教育精神である「人間性の涵養と実学重視」を建学の精神とし、「あなたらしさを仕事力に」というキャッチコピーを掲げて、一人ひとりの個性を重視した教育を行っています。