睡眠不足より、寝過ぎのほうが体に悪い!?
「たくさん寝れば健康になる」は大間違い?
睡眠について「たくさん寝れば健康になる」というのは大きな誤解です。死亡率と睡眠時間の関係を調べてみると、最も死亡のリスクが低くなるのは7時間台。しかし、それより1時間多い8時間台になると死亡率は高まり、むしろ睡眠不足とされる5~6時間台よりもハイリスクとなります。さらに9時間以上ともなると、死亡率は飛躍的に高まります。このことは動脈硬化の原因とされる中性脂肪やコレステロールの血中濃度からも裏付けられており、8時間以上の睡眠は中性脂肪を増やし、善玉コレステロールを減らすことがわかっています。
寝不足と寝過ぎは同じ
面白いことに、同様のことは学業成績でも認められます。例えば、学生のテストの得点分布を調べると、睡眠時間が長過ぎても短過ぎても、点数が低くなる傾向にあるのです。これは実は両者が正反対なように見えて、よく似ているからではないかと考えられます。1日全体の睡眠時間が長い人は仮眠を取っていることが多く、短い人は日中、うたた寝してしまうことがあります。昼と夜の区別が付いていない、睡眠リズムが不規則という点で両者は共通しているのです。
不規則な睡眠は情緒不安定に
睡眠リズムの乱れは精神にも多大な影響を与えます。例えば、不登校の学生の睡眠を調べると、不規則な睡眠リズムの時ほど家庭内暴力を起こしやすいというデータがあります。また認知症の場合、徘徊(はいかい)や幻覚症状は睡眠リズムの不規則性と関係があることがわかりました。両者とも周囲が積極的にかかわり、睡眠リズムを整えると症状の改善が見られます。睡眠リズムの乱れが、情緒不安定を引き起こしていたのです。夜更かしでもリズムが規則的であれば良いかというと、そうではありません。夜更かしを続けると生物リズムに重要な光を目から取り入れる機会が少なく、どんどん生活パターンが後ろにずれて昼夜逆転のパターンとなり、心身ともに重大な悪影響を受けることになります。昼は起きていて夜にちゃんと眠るということが大切なのです。
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先生情報 / 大学情報
江戸川大学 社会学部 人間心理学科 教授 福田 一彦 先生
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