「ことば」の仕組みがわかれば、言語の「なぜ」が見えてくる
日本語と英語は、実は似てる!?
日本語と英語は、大きく異なる言語ですが、語の作り方には共通点があります。例えば、「蜜」と「蜂」を組み合わせると「みつばち」という複合語ができあがります。これに「小屋」や「置き場」などの名詞をどんどん足していくこともできます。英語でも同様に、toyにdogを組み合わせるとtoy dogという複合語ができ、さらにhouseなどの名詞をつけ足すことが可能です。その際、語の一番右の要素が主要部であるという性質も同じです。「みつばち」は蜂のことですが、「はちみつ」は蜜のことです。英語でもtoy dogは犬のこと、toy dog houseは家のことです。
複合動詞から見る、言語獲得方法の違い
とはいえ、やはり異なる点もたくさんあります。例えば、動詞と動詞を組み合わせてできる複合動詞に注目すると違いが見えてきます。sleep-walk(寝たまま歩く)の意味は2つの動詞が表すできごとが同時に起こっていることを表すので分かりやすいですが、日本語の複合動詞は、意味が推測しづらい場合が多くあります。例えば、「切り倒す」には「切る」ことで「倒す」という因果関係があります。しかし、「書きなぐる」には、もはやその関係はありません。複合動詞について幼児の発話から検証した研究では、日本語を獲得中の幼児は複合動詞を2歳台から発話しているのに対して、英語を獲得中の幼児は全く発話していないことが示されました。このことから、両者は異なる方法で複合動詞を獲得すると考えられています。
言語の「なぜ」について考える
このように言語をパズルのように分解していくと、言語間の意外な共通点や相違点を見つけることができます。語の成り立ちや獲得方法を解明できれば、そもそもなぜヒトが語を組み合わせて文を作り出すことができるのか、言語を操ることができるのか、といった言語の「なぜ」が見えてくるでしょう。これは言語を教える人、そして小中高生のように言語を学ぶ人にとっても、言語習得の際の大きなヒントになるはずです。
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九州国際大学 現代ビジネス学部 国際社会学科 准教授 木戸 康人 先生
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