世界の変化を読み解き、進むべき「道」を考える
貿易・投資で「見えないもの」も他国に移動する
日本はもちろん世界中の国々が、さまざまな物品・サービスや金融資産を国際取引しています。では、貿易・国際投資によって国際移動するのは、「モノ・サービス」と「カネ」だけでしょうか? 実は取引対象ではない、技術・ノウハウ、交渉力、仕事などの「見えないもの」も合わせて、国から国へと移動しています。
中国が20年ほどで工業大国になった理由
今や世界第2位の経済大国となった中国も20世紀終盤までは工業技術をあまり持たない開発途上国でした。しかし、2001年にWTO(世界貿易機関)に加盟して以降、急激な経済成長を遂げました。わずか20年ほどで経済大国に成長できた主な理由の一つは、工業分野での国家戦略です。先進国から高度な部品を輸入することに加えて、先進国のメーカーを誘致し、自国企業との合弁会社を次々と誕生させました。そして、繊維、工作機械、電子機器、自動車などの分野を中心に、製造技術や開発ノウハウを自国の技術者や製造現場の従業員に学ばせたのです。
世界を「見える化」させ、道を選択する
経済的なつながりが国境を越えて広がることを「グローバリゼーション」と呼びます。この現象が進むことで、チャンスばかりでなくリスクも発生します。中国の事例では、まず中国へ進出する日本企業には安価な労働力と巨大な市場というチャンスがあります。一方で、技術が吸収された結果として、日本の企業や労働者の交渉力が低下したり、仕事がなくなるというリスクもあります。
仕事がなくなった企業や労働者に対して、「かわいそう」「運が悪かった」と感じるのはもっともなことです。しかし、私たちはそれらの変化・リスクを見越して、習得するスキルや職業を選択していく必要があります。そこで、「国際経済学」は、国際的に移動する「見えないもの」を「見える化」させ、世界経済の変化を観察・予測します。自分たちが今後どのような「道」を世界の中で選択すべきかを考える学問なのです。
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先生情報 / 大学情報
広島修道大学 経済科学部 経済情報学科 准教授 新宅 公志 先生
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