犯罪行動のメカニズムを知り立ち直りに役立てる犯罪心理学
人はなぜ罪を犯すか
人が罪を犯すリスク要因は、「個人的要因」と「環境的要因」に大別できます。個人的要因とは、価値観の偏りや犯罪に親和的な考え方など、個人の側の要因です。非行や犯罪に走る人は、周囲の迷惑よりも自分の利益を優先したり、こんなことは誰でもやっていると、自分の行動を都合よく正当化したりすることがあります。一方の環境的要因とは、周りに非行や犯罪の道に誘う仲間がいたり、家庭・学校・職場生活がうまくいっていないなど、個人を取り巻く環境面の問題です。家庭などの大切な居場所で、身近な人との心の絆が築かれず、打ち込めるものもなくしたりすると非行や犯罪に陥りやすくなります。
自分の思考・感情・行動のパターンに気付き生活を変える
罪を犯す人には、物事を吟味検討する習慣が弱く衝動的に行動しがちな人もいて、生活に困ったら、適切な解決策を考慮せず盗むなど、行動選択の幅が狭くなっていることがあります。そうした思考や行動の習慣(くせ)は「認知行動療法プログラム」で改善可能です。例えば、対人トラブルでカッとなり人を殴ってしまった場合、それは瞬間の出来事のようですが、そのときの思考や感情の動きや行動を図解して振り返ることで、自分の思考や行動のくせに気付くことができます。あのとき自分は何を求めていたのか、暴力以外にどんな解決策があったのかなど、冷静に振り返り建設的な行動レパートリーを増やします。教育や訓練により、仲間からの誘惑を断るスキルを身につけたり、家族や社会との絆を強めたりすることを通じ、負のループをより良い生活に転換できます。
受刑者から社会の支え手に
高齢化の進む日本では、社会の支え手が必要です。人が非行や犯罪から立ち直り(更生)、社会復帰することは、納税者、つまり社会の支え手が増えることにもつながります。非行や犯罪のある人が社会的に不利な立場に置かれたり、教育の機会を奪われたりするという負の連鎖を断ち切ることは、加害・被害当事者だけでなく、安全安心な共生社会推進にも大きなメリットがあります。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
常磐大学 人間科学部 心理学科 教授 寺村 堅志 先生
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