音楽の授業に国語、体育、図工を取り入れる「音楽劇」のススメ
音楽教育の問題点
現在の学校教育では、音楽や美術といった芸術分野の科目の授業時間数が削減される傾向にあります。小学校では音楽の専科教員が少なく、テープやCDなどの音源を流すだけということもあります。こうした状況にあっても、より充実した音楽教育を行うために、授業に「音楽劇」を取り入れるという研究を進めています。主に、国語の教科書に掲載されている『ごんぎつね』『スイミー』『もちもちの木』など、内容がわかりやすく、はっきりとした展開がある物語が適しています。明るい部分は長調で、悲しい部分は短調で、また和音やリズムの変化によってそれぞれのシーンを印象的に作曲していきます。
音楽劇の作り方
生徒に伝わりやすい曲にするためには、楽曲の構成や一つひとつの音の表現、編曲といった音楽の高度な専門知識や理論が求められます。また、より能動的に音楽に親しむ姿勢を育むため、現場で生徒や教師がアイデアを出し合いながら、自分たちで楽曲をアレンジしたり、振付を考えたりできる余地を残しておくことも大切です。実際の授業では、歌だけでなく、ダンスや、衣装・小道具の製作も取り入れるなど、国語、体育、図工といった科目の要素も盛り込みます。そして、クラス全体で音楽劇を完成させるのです。
音楽の素晴らしさを伝える
楽器の演奏や音符の読み書きが得意でない教師の中には、表面的なことしか教えられないと葛藤を抱く人もいます。さまざまな科目の要素をもちあわせた音楽劇なら、教師も取り組みやすく、自分の考えを出しやすいという利点もあります。生徒にとっても、自分が好きな物語がテーマになることや、ダンスで体を動かし、モノづくりを楽しむことで、音楽をより身近に感じられるでしょう。
子どもの頃に素晴らしい音楽に触れることは、感受性や豊かな人間性を育むことにもつながります。学校の音楽科教育のサポートを通して、音楽の素晴らしさを伝えることも、音楽研究の重要な意義なのです。
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先生情報 / 大学情報
フェリス女学院大学 音楽学部 音楽芸術学科 准教授 大田 桜子 先生
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