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使用後のプラスチック再生の必要性
プラスチックは必需品ですが、資源の枯渇や海洋への流出による汚染が課題であり、その解決策として様々なリサイクルが実践されています。例えば、燃やして発生した熱を電気とする「サーマルリサイクル」や、形を変えて再利用する「マテリアルリサイクル」です。
より根本的な解決につながるのが「ケミカルリサイクル」という、プラスチックを分子レベルまで分解して、化学原料が再生する技術です。しかし、プラスチックは非常に丈夫であるため、分解には大きなエネルギーや強力な薬品が必要となり、かえって環境に負荷がかるという課題も抱えています。
プラスチックを分子レベルで分解
プラスチックの環境への悪影響の懸念と資源問題の観点から、「コアブロックテクノロジー」が開発されました。構造の中に、壊れるきっかけとなるユニット「コアブロック」をあらかじめ組込んでおく技術です。耐久性は通常のプラスチックと同等になるように研究が進行中です。分解に関しては、プラスチックの使用後に光触媒を使ってコアに電子的刺激を与えると、分子全体の構造が簡単に壊れて原料に戻る仕組みになっています。実験室レベルにおけるこの方法での再利用可能な素材の回収率は条件によっては100%に達し、実用化に向けた研究が進められています。
混雑分子を研究する
分解性プラスチックのコアは、立体的に込み入った構造をもち、このような分子は、「混雑分子」と呼ばれています。たくさんの原子が密集しているため、通常の化学反応では思い通りの合成や分解ができません。こうした混雑分子を操るために、電子の作用を用いて、分子を一時的に「ラジカル状態」と呼ばれる、非常に反応性の高い状態に変化させる技術の研究が行われています。この方法なら、複雑な有機分子の合成はもちろん、プラスチックのような高分子の分解もコントロールできるようになります。分子のレベルから素材を操作するこの研究は、環境に優しい持続可能なものづくりに向けて、大きな可能性を秘めています。
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山口大学工学部 応用化学科 教授西形 孝司 先生
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