幸せのための経済学 厚生経済学
人の「幸せ」をどう測るか?
人の「幸せ」をどのような尺度で測るのでしょうか。例えば、GDP(国内総生産)のようにモノやサービスの量を比較する方法があります。しかし、人間は社会的環境や個人的特性によって、同じモノやサービスを得ても実際に「何ができるのか」、「どのような状態を実現できるのか」は異なります。これを「潜在能力」といいます。さらにモノやサービスを消費すれば何らかの満足感が得られます。これを「効用」といいます。モノ・サービスの量、潜在能力、効用のうち、福祉(well-being)の観点からは潜在能力によって人の幸せを測ることが適切と考えられます。
経済は人を幸せにするためにある
経済とは、「限られた資源を使ってモノやサービスを生産し、分配するシステム」のことです。そして、経済は人を幸せにするためにあります。人は自ら働いて生産に貢献するとともに、生産されたモノやサービスを消費する存在です。この両面を考慮しながら経済システムを検証し、「人々の幸せを高める」という観点から評価することが重要です。そのためには、現実の経済システムがどのように動いているのかを理論的・実証的に解明するとともに、どのような社会が望ましいのか、その規範的な評価基準を提示することも必要です。「厚生経済学」は経済学の中でも、この規範的な分野を担っています。
効率と衡平
「人々の幸せを高める」という観点から経済システムを見たとき、もし全員の状態を高めることが出来るのにそれが実現されていないとしたら、限りある資源の利用に無駄があることになります。この意味での無駄がない資源の配分、つまりそれ以上、全員の状態を高めることが出来ない配分を「効率的」といいます。効率的な配分の中には、平等な配分から一人が独占する配分までいろいろなものがあります。そこで、「人々の状態の間に釣り合いがとれている」、「格差がない」という意味の「衡平性」が重要になります。効率性だけでなく衡平性の観点から経済システムを評価することが大切です。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
一橋大学 経済学部 経済学科 教授 蓼沼 宏一 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
経済学、厚生経済学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?