目を見て話そう!聴覚障がいのある子どもの心の成長から学ぶこと
立ちはだかる「9歳の壁」
聴覚障がいのある子どもにとって、日本語の読み書きを習得することは大きな課題です。言語の習得が遅れると「9歳の壁」を乗り越えるのが難しいと言われています。「9歳の壁」とは、小学校3~4年生になり「高度になった学習内容についていけない」「抽象的な考え方が理解できない」「複雑な心情を読み取れない」といったハードルです。聴覚障がいのある子どもの日本語習得方法ついては課題が残されており、研究が続いています。その中で、乳幼児期からの保護者とのコミュニケーションも、解決の一助となることが明らかになってきました。
気持ちが通じ合うことで成長する子どもの心
子どもの心の理論の基盤となるものの一つに「共同注意」があります。これは「ねえ見て、お花きれい」と子どもが言ったことに対して「きれいなお花だね」と返す、つまりお互いの気持ちが通じ合っている状態のことで、子どもの心の発達を促す働きかけをします。生後9カ月ごろから共同注意が現れ始める子どももいますが、日本語の習得が難しい聴覚障がいのある子どもの場合は遅れる傾向にあります。ところが、デフファミリー(家族全員に聴覚障がいがある家族)で育つ聴覚障がいのある子どもは、早期から共同注意が成立していることが明らかになっています。手話を言語として家族と気持ちが通じ合っているからです。
目と目を合わせて会話することの重要性
最も大切なことは「目と目を合わせるコミュニケーション」です。実は日常生活では、目と目を合わせずに会話するケースが大変多いのです。そのことは障がいの有無にかかわらず、保護者との関係や子どもの心の発達に影響を及ぼします。
新生児聴覚スクリーニング検査が導入されてから、生後すぐに聴覚の問題が発見され、生後4~5カ月ごろから特別支援学校の乳幼児教育相談に通うケースが増えました。障がいのある子どもの心の発達をひもとくことで、教わることはたくさんあります。特別支援教育は教育の原点なのです。
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南九州大学 人間発達学部 子ども教育学科 准教授 本田 和也 先生
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