行動科学に基づく栄養教育とその有効性
健康と栄養は密接な関係
糖尿病や高血圧などの病気は「生活習慣病」とよばれ、食事や運動、睡眠などの生活習慣を改善することによって、予防や改善につながることが明らかにされています。国家資格の管理栄養士は、以前から予防や改善に役立つ食事(食品や料理、献立など)を研究し提案してきました。さらに、2000年の「栄養士法」改正を機に、人々が健康的な食事や生活習慣を実践するためには、どのような働きかけや支援(栄養指導・栄養教育)が必要かについても研究されるようになりました。なぜなら、どんなに効果的な食事がわかったとしても、行動を変え継続する意欲や技術が十分でなければ、病気の予防や改善につながりにくいからです。
行動科学に基づく栄養指導
しかし、生活習慣を変えること、つまり行動変容を起こすことは簡単ではありません。食事や生活習慣は長年かけて身につけてきたものであり、本人の好み、周りの環境、家族関係、収入など多くの影響を受けています。管理栄養士は、それぞれの人の状態に応じて働きかけの方法を変えなければいけないのです。そのときによりどころとなるのが「行動科学」です。行動科学とは、人間の行動の法則性を科学的に明らかにする学問です。管理栄養士は、対象者の認識や感情、価値観、行動を変えることへの意欲の程度を捉え、さまざまな専門的行動変容技法を用いて働きかけを行います。その結果を評価し、それらを積み重ねることで、より適切な栄養教育の方法が研究され実践されていくのです。
栄養教育の有効性を明らかに
こうした栄養教育の効果を科学的に明らかにすることは容易なことではありません。そこで、学校を対象として、管理栄養士による栄養教育を受けたグループと受けないグループの食事や生活習慣、心身の健康問題(SPS)について有意な差(誤差では済まされない統計的に意味のある差)があるかどうかを、調査解析する研究を紹介します。栄養教育の有効性が認められ、管理栄養士が各分野で人々の健康づくりに貢献することが期待されています。
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先生情報 / 大学情報
南九州大学 健康栄養学部 管理栄養学科 教授 渡邉 純子 先生
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