障がいのある人が健康に暮らすための食事って?
食事摂取基準はすべての人に適用できるのか
「日本人の食事摂取基準」という言葉を聞いたことがありますか。これは健康な個人・集団を対象にした、健康の維持・生活習慣病の予防のために必要なエネルギーや栄養素の摂取量の基準で、給食などの献立もこの基準をもとに作られています。しかし、この基準をすべての人に当てはめていいのかは疑問が残ります。
具体的に言うと、車いすなどを利用する体に障がいのある人は、健康な人と比べると体格や体を動かす頻度などが異なります。しかし、専用の食事摂取基準は存在しないので、現在は障がいがある人にも、「日本人の食事摂取基準」をもとに献立が作成されています。
障がいのある人に必要な摂取量
こうした現状を改善するため、障がいがある人に必要なエネルギーや栄養素の摂取量を明らかにする研究が行われています。調査方法としては、まず障がい者支援施設で提供される食事からエネルギー量および栄養素摂取量を調べます。また、対象者の呼気分析をして安静時の代謝量を計算したり、「二重標識水法」という方法で総エネルギー消費量を調べたりします。さらに身体計測をして、どのような食事の時にどのような体格であるかを丁寧にみます。調査の結果、いくつかの栄養素は必要量を下回っているケースがありましたが、低栄養と思われる人はいませんでした。また、障がいがある人は健康な人に比べてBMIは低いが体脂肪率が高いという特徴も見えてきました。
新たな食事摂取基準の作成をめざして
この研究はまだ数が少なく、食事内容と対象者の栄養状態などの相関関係を知るためには、さらなる調査が必要です。また、体に障がいがあるといっても先天的に障がいがある人、事故や病気などで後天的に障がい者となった人などによって症状が異なります。症状によっては健康な人より多くのエネルギーを消費するケースもあるので、障がいの種類・程度別のデータ収集も必要になるでしょう。将来的に障がいのある人がより健康的に暮らせるような食事摂取基準の作成をめざして、研究が進められています。
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山形県立米沢栄養大学 健康栄養学部 健康栄養学科 講師 金谷 由希 先生
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