現代の教師の、あるべき姿とは?
理想の教師像とは
日本の教師は、かつては聖職者と見られましたが、これは過去に国家によって創られた理想像です。しかしそれを教師が受け入れてきた歴史もあり、献身的教師像として定着して今に至ります。それが教師自身の首を絞め、多忙化を招いています。
理想の教師像とは本来、教育現場で、教師自身が紆余曲折を経て形作っていくものです。今の最大の問題は、試行錯誤の余裕がないことです。どんなに子どもと共に成長したくても、校務や評価のプレッシャーなどで、日々の充実感すら得ることが難しいのです。まずはそのような現場の声を聴き取り、政策に反映させる必要があります。
誇るべき教育遺産、綴方(作文)教育
日本の教育の歴史で、誇るべきものがあります。その一つが戦前昭和~戦後初期に盛んだった「生活綴方(つづりかた)」という作文教育です。教師は子どもに自分たちの身近な生活問題に関して文章を書かせ、それを通して社会認識=ものの見方・考え方を指導しました。社会の客観的認識(何かを「知る」)と切り離さないかたちで、自己の生き方(「どう生きるか」)を探求した、この実践は優れた遺産といえます。
戦前は、国家統制の中で学校でも社会問題を十分に扱うことができず、社会科という教科もありませんでした。しかし、貧困などの生活現実を前に、書くことを通して子どもたちは、地域や社会に目を向ける重要性を実感し、実際に行動にも移しました。戦前の教師は、そこに熱心に取り組んだのです。
自己表現できるように導く
ところが戦後の高度経済成長で世の中が変わり、教育も自己を表現する学びより、知識を詰め込み、受験戦争に勝つ方向へと転換しました。作文教育も、最近の教育改革では強調されなくなっています。それでも、子どもの表現(=意見表明)の場は大切です。生徒による校則の見直し運動などは、そうした表現への根源的欲求の現れかもしれません。
教育現場でいかに生徒の声を反映させることができるか。かつてそれが実践できたように、教師には生徒の声を聴き取る実践が求められます。
参考資料
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帝京大学 教育学部 教育文化学科 准教授 佐藤 高樹 先生
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