講義No.00830 教育 児童学

教師と地域の教育力

教師と地域の教育力

「子どもの秘めた力を引き出す「響育」」

子どもの成長には支え合う仕組みが必要です。例えば、ある小学校2年生のクラスでの話です。車いすで生活するクラスメートのために、退院祝いのお楽しみ会を開くことになりました。レクリエーションの内容を子どもたちが話しているとき、動きの激しい遊びは無理だから避けようという意見が出ました。ところが、本人が「大好きだから、やりたい」と希望したので、子どもたちは「まずやってみて、みんなで遊べるように助け方を練習しよう」と、車いすの子が好きな遊びに決めたそうです。
子どもたちは、やさしい心や考える力を秘めています。それを養い、発揮できる場が必要です。子どもたちが支え合い、持っている力を互いに引き出し合う「響育」するクラスをつくれる教師が求められています。

「支えはできるだけ多く」

また逆に、学級の運営が困難な状態におちいった場合、担任の教師だけで立ち直らせることは、非常に難しいことです。調査では、学級崩壊から回復できる方法が2つあるという結果が出ています。ひとつは教師集団がその学級をサポートすること。担任以外の教師が助言したり授業を交代することで、問題解決への道を開く方法です。もうひとつは、保護者や地域の力。子育ては地域全体で行うという意識を持ち、行動に移す方法です。例えば、学校が新しい取り組みを始めたときには、地域が協力するという姿勢が子どもたちに変化をもたらします。学校という社会には子どもの集団を支える教師の集団があり、さらに保護者の集団や地域社会があります。これらが一体となって支える仕組みが学級を立ち直らせます。子どもと教師の「響育」を支える「共育」の仕組みはできるだけ多い方が良いのです。
さまざまな原因で生きづらさを抱えている子どももたくさんいます。このような子どもをどうサポートするかが現代の大きな課題です。弱者に目が届く教師が必要なのはもちろんのこと、学級づくりのために、地域を含めた多くの人で支える「共育」のネットワークを構築していくことが重要なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

國學院大學 人間開発学部 子ども支援学科 教授 夏秋 英房 先生

國學院大學 人間開発学部 子ども支援学科 教授 夏秋 英房 先生

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メッセージ

地域には伝えられてきた文化があります。それは歴史と生活に根ざした伝統文化です。これらを子どもたちに生活をとおして体験させる機会を持つことが大切です。また、学校の授業に地域との関わりを持った活動が多く取り入れられています。地域の文化を継承し創造する教育を学校と地域が連携して「共育」することで、よりよい地域がつくられていくでしょう。教育とは、二世代先の子どもを育てる営みです。いまここで育てた子どもが、次に自分で育てる子どもに大切なことを伝えることで、よりよい社会がつくられていくのです。 

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140年以上にわたって、日本に関する教育研究を推進してきた國學院大學は、物事の本質を問い直す学びを大切にしてきました。6学部13学科を擁する現在は、未来の共生社会を創り出す人材の育成を目標に、各学問の立場から日本と世界への理解を深める学びを提供しています。既存の知を熟考し、新たな「知の創造」に挑む本学での4年間は、自身の自己実現や卒業後のキャリアで求められる人間力を涵養するための第一歩となるはずです。