身近な温度差を電気に換える「熱電変換」材料
熱エネルギーの可能性
「熱」は、身近なエネルギーですが実はロスが大きいという現実があります。例えば、ガスコンロの火炎温度は1700 ℃程度で、その温度を利用して40~100 ℃のお湯を沸かしています。さらに自動車もガソリンを燃焼して動きますが、その熱エネルギー効率は30%程度であり、大部分の熱エネルギーは大気中に捨てられています。こうした日本中で発生している年間の排熱量は原子力発電所数百基分に相当し、この1%を電気に変換できると、日本から原子力発電所が数基不要になります。そう考えると熱エネルギーはすごい可能性があると思いませんか?
太陽電池VS熱電発電
再生可能エネルギーの代表格である太陽電池と熱電発電を比較してみます。太陽電池のエネルギー変換効率が10~15%であるのに対して、熱電発電では5~10%と、まだまだ変換効率が低いのが研究課題となっています。しかし、太陽電池の寿命が20年以上であるのに対して、熱電発電は30年以上あります。熱電発電は、温度差があれば発電できるので、温度差が生じる所であればどこででも利用可能で、太陽電池のように天候に左右されることもありません。今後カーボンニュートラルやSDGsを実現するために、これらのエネルギーを特性に応じて使い分ける、もしくは融合することが必要になります。
熱電発電をもっと身近にするために
熱電発電を普及させるためには、何はともあれ変換効率を向上させる必要があります。さらに環境調和するために安全で低コストも実現しなければなりません。非常に難しい課題ですが「ものづくり精神」から素晴らしい材料を開発して世界において存在感を発揮しながら地球規模における環境問題に立ち向かっています。そこで重要になってくるのが基礎研究という材料の本質と対話する研究です。すぐに課題を解決する結果は得られませんが、地道な研究の先に今後の科学技術の発展、そして環境問題に解決につながる抜群の材料が得られるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
宮崎大学 工学部 環境・エネルギー工学研究センター (電気電子工学プログラム) 准教授 永岡 章 先生
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