フランスの政策から現代ヨーロッパの姿を知り、日本の政策に生かす

フランスの政策から現代ヨーロッパの姿を知り、日本の政策に生かす

多様性と共存

ヨーロッパでは、第二次世界大戦までの戦争の時代を経た後、互いに支え合い協調する政治システムが生み出されました。国際関係ではEUという地域統合が実現しました。長年戦争を繰り返してきたドイツとフランスが和解し、協調的関係を築くことに成功したのです。また国内においても大恐慌や総力戦の経験から、困窮時に国民が支え合う福祉国家が誕生しました。その根底には、アメリカとは異なる独自の政治システムを確立し、またヨーロッパの文化や社会の多様性を守ろうとする意識がありました。
EUには2019年6月現在、28カ国が参加していますが、必ずしも単一の空間をめざしているわけではありません。各国には独自の言語や文化を持つ少数民族が存在し、また町や村ごとに代々受け継がれてきた独自のチーズやワインといった食文化があります。また伝統的な家族像にこだわらず、新しい時代に応じた多様な個人の生き方や子育ても追求されています。

スカーフ禁止の背景

このようにヨーロッパには自らの価値観に対して強い自負があります。しかしこのヨーロッパのこだわりが時として、イスラムなどの他者の価値観との共存を難しくしているのです。例えばフランスでは、革命以来の伝統として、政治と宗教を分ける政教分離が共和国の理念として大切に守られています。ただ、国内にイスラム教徒が増えている中で、政教分離の原則から、公立の学校や公的な機関の中でイスラム教徒の女性が身につけるスカーフの着用を禁止する法律さえ制定されました。伝統的価値観へのこだわりが強いが故に、そこから外れたものに対し、排外主義的ともいえる政策を生み出しているのです。

日本の反面教師として

ヨーロッパの国際関係学は、歴史と政治の領域をまたぎながら、ヨーロッパの現実の姿を考察する学問です。ヨーロッパが直面している少子化問題や移民問題は、日本でも同じように深刻化しています。より良い日本をつくるためには、ヨーロッパの成功例だけでなく、失敗例にも学ぶ必要があるでしょう。

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先生情報 / 大学情報

フェリス女学院大学 国際交流学部 国際交流学科 教授 上原 良子 先生

フェリス女学院大学 国際交流学部 国際交流学科 教授 上原 良子 先生

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国際関係学、国際政治学、地域研究学

メッセージ

興味を持ったテーマがあれば深く掘り下げて調べてみましょう。テーマは教科書やニュース、メディアで見たものだけでなく、小説やマンガ、ゲームからでも構いません。例えばゲームでは、ギリシア神話や日本の武将をモチーフにしたものがあります。そこから歴史の本をひもとくのもいいでしょう。
大学の学びは自由です。これが真面目で、これが不真面目だという垣根はありません。ひとつのテーマを深め、さらに次の領域に進んでいくことにより知の冒険者になることができます。

先生への質問

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