大麻を吸うとどうなる? 体内で起こる現象を探る
大麻の影響を正しく知る
日本では違法薬物の大麻ですが、人体に影響を及ぼすメカニズムの解明はまだ不十分です。仕組みを理解すれば「正しく怖がる」ことや、医療用の使い道がわかると考えられています。これまでの研究によって、主に「脳神経系」と「免疫系」に大麻の影響を受けている可能性がある「カンナビノイド受容体」というセンサーがあることがわかってきました。どちらも普段は体の健康を保つために働いていますが、大麻が体内に入ると機能が狂ってしまうことが明らかになりました。
普段とは違う働きをするセンサー
1つ目のセンサーがある「脳神経系」は普段、情報を伝達する役割を担っています。情報は電気シグナルとして神経細胞の突起を伝わっていき、神経細胞と神経細胞の間にあるシナプスというすき間のところでは、化学物質がシナプスの前側から後ろ側に放出されることによって、情報を伝えています。しかし大麻に反応するとシナプス部分のコントロールがおかしくなってしまいます。その結果、脳内の情報伝達に異常をきたすのです。
2つ目のセンサーがある「免疫系」は、体の外から敵が侵入したときに戦っています。ただし大麻が体内に入ると免疫系の働きが阻害されることがわかりました。免疫系は体を守るために欠かせませんが、過剰に反応するとアレルギーを引き起こします。もし適切な量の大麻で過剰な免疫を抑制できれば、薬の開発に役立つかもしれません。
未知のセンサーを探る
大麻の成分に反応する3つ目のセンサー(新規カンナビノイド受容体)と考えられるのが、「GPR55受容体」です。最初の2つに比べると情報の伝達メカニズムなど不明点が多いため、基礎研究が求められています。現在、マウスを使った研究が進行中です。GPR55受容体を持つ個体とそうでない個体を、同じ条件下で観察します。運動したときや炎症が起きたときなど、さまざまな状況でGPR55受容体の有無による違いが出れば、どのような働きを持っているのかを探る糸口になります。
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帝京大学 薬学部 薬学科 准教授 岡 沙織 先生
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