テーマパークに続け! データを利用した観光戦略
入園料はなぜ変わる?
TDRやUSJなどのテーマパークでは、日によって入園料が変動します。これは来客数を過去のデータから分析し、需要が多いときに料金を高くしているからです。このように需要と供給のバランスに応じて価格を変動させる手法を「ダイナミックプライシング」といいます。このダイナミックプライシングを、データをもとに行っている観光関連の企業は、まだ大手ばかりです。中小企業や昔ながらの旅館などは「この時期は祭りがあるので観光客が増える」など、経験に基づいて料金を決めています。しかし日本の観光業全体が経営にデータを利用して生産性を上げなければ、観光立国として国際社会で生き残ることは難しいでしょう。
ICTやAIで進歩する価格付け
データの収集と分析にはICT(情報通信技術)やAI(人工知能)が活用されており、1日の中でもどの時間帯に人が多いかといった細かなデータを価格に反映できます。携帯端末などのデバイスのGPSの位置情報を地図上に表示すれば、人の流れを把握することも可能です。政府が公表している従来の統計データでは、市町村単位までしか地域を細かく区切ることができませんでした。しかしGPSを使えば市内のどこに人が多いのかなど、より小さな地域の情報が集められます。
地域全体でのデータ活用は難しい?
もし観光地全体でダイナミックプライシングを導入すれば、観光客が増えすぎて地元民の生活や環境の破壊が進むといった「オーバーツーリズム」などの課題も解決できる可能性があります。観光客数が調整されれば対策がしやすくなるほか、飲食店などが来客数の予測を立てやすくなるでしょう。
しかし地域でダイナミックプライシングを行ったとしても、あとからより安い価格を付けてもうけようとする業者も出てきます。こうした課題に対処するためには、人の心理や市場の動向などに目を向けることも必要です。観光に関するデータは、ほかの要素と組み合わせることでさらに力を発揮するといえます。
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立正大学 データサイエンス学部 データサイエンス学科 教授 大井 達雄 先生
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