言葉から人間や文化が見える?

言葉から人間や文化が見える?

言葉に表れる人間の物事の捉え方

言葉は、コミュニケーションや思考の道具です。しかし、単なる機械的な道具ではなく、言葉の背後には常に人間がいます。私たちの周りに存在するどんな言葉にも、その背後には人間がいるのです。言い換えれば、言葉には人間の物事の捉え方が表れています。例えば水が半分入ったコップを見て、Aさんは「半分も」と言い、Bさんは「半分しか」と言います。その人の予測や捉え方の違いによって、「も」や「しか」になるのです。このように、言葉を分析すると、私たち人間の物事の捉え方、心が見えてきます。

英文法に現れる人間の能力

例えば、英語の「仮定法過去」は過去形を使用しますが過去の意味はありません。なぜ過去形を使用するのでしょうか。実は、仮定法において過去形は時間の隔たりを表しているのではなく、現実と仮定の間の隔たりを表しているのです。過去形をこのような目的で使用できるのは、私たち人間が時間の隔たりを空間の隔たりとして捉えるという能力を持っているからです。
次に完了形を考えてみましょう。完了形には助動詞haveが用いられていますが、このhaveは何なのか考えたことがありますか? 実は完了形は所有を表す動詞haveから生まれた用法なのです。もともとは「モノ」の所有を表していたhaveが、「コト(出来事)」の所有へと時間をかけてその意味を拡張させました。この拡張の基盤となったのは「コト」を「モノ」として捉える人間の能力でした。このように、私たち人間の物事の捉え方の柔軟さが新たな表現を生み出し、文法を広げていったのだと思います。

言葉の背後にあるものを解明する言語学

言語学は言葉の背後にある人間を見つめ、言葉の様々なメカニズムを解明する学問です。言葉を分析することで言葉の仕組みだけではなく、その背後の人間が見えてきます。人間が物事をどう捉え、どう表現しているかという視点から言葉を見ると、英語や日本語など言葉に対する見え方がガラリと変わるかもしれません。

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静岡県立大学 国際関係学部 国際言語文化学科 准教授 田村 敏広 先生

静岡県立大学 国際関係学部 国際言語文化学科 准教授 田村 敏広 先生

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言語学、英語学、比較言語学

先生が目指すSDGs

メッセージ

人からどう見られるか、どういう印象を与えるかを考え、ファッションや髪型などの見た目を意識している人は多いでしょう。しかし、その人の言葉遣いが与える印象は、想像以上に大きいものです。自分の言葉遣いを見直すことは、きっと人生において大きな財産となります。
なぜ自分はその言葉を使うのか、それを相手がどう聞いて、どのような影響を与えるのかを意識してみましょう。すると、相手に伝わる言葉やインパクトを与える言葉遣いなどが見えてきます。自分の言葉は一生付き合っていくものなので、ぜひ大切にしてください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

静岡県立大学に関心を持ったあなたは

静岡県立大学は、5学部9学科を有し、国際化・情報化・高齢化・環境問題という21世紀における最重要課題を展望しつつ、新しい時代を支える有為な人材の育成を目的としています。自主性や公共性を強く意識し、地域社会からの評価を得られるように、大交流時代において選ばれる大学を目指します。研究分野では、文科省のグローバルCOEプログラムに採択され、研究レベルが国内トップクラスといえます。