見方を変えると、歴史はもっともっと面白い!
坂本龍馬と薩長は同志だったのか?
「幕末に活躍した歴史ヒーローは?」と人気投票をすると、必ず上位に名前が挙がるのが、土佐出身の坂本龍馬です。人気の主な理由は、歴史の教科書にも書かれているように、江戸幕府を倒す上で大きな役割を果たした薩長同盟の仲介者であり、時代の変革者であった点に見いだすことができます。ここからイメージされる龍馬と薩長の関係は、ともに倒幕をめざす同志ととらえられるかもしれません。しかしさまざまな文献を読むと、倒幕後に龍馬がめざしていた政治路線は、薩長が企図したものとは必ずしも一致しないことがわかります。そうした点に着目していくと、龍馬と薩長を同志ととらえる見方に違和感が出てきます。
教科書だけではわからないストーリーがある
歴史上の出来事には、「いつ、誰が、どこで、何をした」という教科書の数行からではわからないストーリーがたくさんあります。薩長と袂(たもと)を分かった龍馬らの活躍により、幕府が政権を返上する大政奉還を実現した日本は、その後、対外戦争を繰り返すことで勢力拡大を図りました。国家の発展という成功物語を紡ぎながら、しかしなぜ破局への道をたどってしまったのか? どうして戦争を回避することができなかったのか? そうした問題を探るためには、戦争をめぐって展開された容認派と否定派、双方の議論を検証することが不可欠です。
未来へのヒントを得るために
「明治以降の日本は西洋に虐げられ、遅れをとってきた」と主張し、力を持ってアジアから西洋を追い払うことが日本の生存にとって必要、と考え行動した徳富蘇峰(とくとみそほう)、他方で日露戦争への参加を通じて戦争の悲惨さを自ら体験し、勝っても負けても計り知れないダメージを受ける戦争の無意味さを訴えるようになった元海軍軍人の水野広徳(みずのひろのり)等々。日本近代史における、こうした多様な意見を知ることの重要性は、歴史の事実が何を問いかけているのかに気付き、より良い未来へのヒントを得ることにあります。
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先生情報 / 大学情報
埼玉学園大学 人間学部 人間文化学科 教授 福島 良一 先生
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