歩くだけで幸せに? 散歩で得られるさまざまな効果

幸福感や地域の絆がアップ
散歩は、多くの人にとって身近な運動です。「散歩」することは健康だけでなく、幸福感の向上や地域の絆を強める効果もあることが明らかになってきています。
東日本大震災や熊本地震では、仮設住宅で暮らす人たちの運動不足解消、および震災で損なわれた地域の絆回復のために、被災した人たちに正しい歩き方などの講習を行って歩くことや散歩を呼びかけるプロジェクトが実施されました。プロジェクトを通してわかったのは、一人で黙々と歩くよりもグループで楽しく散歩したほうが長続きして、地域の絆も強まるということです。
生理学的に測れる幸福感
こうした取り組みにおいて、地域の「絆」に関する評価にはアンケート調査が用いられますが、「幸福感」については脳生理学の観点からの評価が可能です。頭の前方部分にある脳の前頭葉は、ポジティブな気持ちのときは左側の活性が高く、逆にネガティブな気持ちのときには右側の活性が高くなることがわかっています。そのため、おでこの両側に電極を貼り付けるだけで、簡単に幸福感を計測できます。散歩を始めると、脳は幸せに傾きますが、仲間とお話をしながら散歩すると、さらに幸福感が高まります。
ありありとした「私」を感じる
重い頭を持つヒトにとって、立って歩くことは、実は不安定でリスクを伴う動作です。そのため、立ち上がって歩き始めると五感が鋭くなり外界からの入力が増大します。それと同時に脈拍が上がるなど内側からの感覚も生じ、それらが脳で符合することで「私」という感覚(自己)が生まれるといわれています。
身体を構成する細胞が数カ月で入れ替わってしまう中で、「私」という感覚を保てるのは、身体を動かすこと(身体的自己)に加えて、「他者からの承認と評価」(他者的自己・社会的自己)の3つの要素です。これらの要素を満たすので、「みんなで散歩」は、ウェルビーイング(身体・精神・社会的によい状態=長期的な幸福感)につながるものと考えられます。
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帝京大学 医療技術学部 スポーツ医療学科 教授 佐藤 真治 先生
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