技の熟練度がひと目でわかる! 「挙動曲面」とは

技の熟練度がひと目でわかる! 「挙動曲面」とは

動きをコンピュータに取り込む

ゲームのキャラクターには、本物の人間のように滑らかでリアルな動きをするものがあります。これはモーションキャプチャ技術の成果です。関節にセンサを付けたり、マーカーを付けて撮影したりして動きを測定し、コンピュータに取り込む技術です。
モーションキャプチャは、スポーツ、伝統芸能、職人技などの教育にも使われます。初心者と熟練者の動きの違いをモーションキャプチャで分析して可視化することで、観察や説明だけでは理解しにくい微妙な違いをひと目でわかるようにするのです。

動きの要素すべてを曲面で表す

従来のモーションキャプチャによる可視化技術は、関節の位置や角度はわかるものの、動きの速さがわからないなど、必要な要素をひと目で把握できませんでした。また、センサやマーカーを付けると動きにくいという問題があります。
そこで、何もつけずに撮影した動画から関節の位置を特定し、かつ、関節の軌道、動きのタイミングやリズムなど、すべての動作の要素がひと目でわかる方法が開発されました。「挙動曲面」と名付けられた技術で、動作の始まりから終わりまで、各要素がどう変化したかを、3Dの「曲面」で表すものです。例えばサッカーのキックであれば、腰、膝、足先が動いた軌跡を点で表して、その全部の点をつなげた曲面を構成します。そして、タイミングやリズムは曲面の「色」として表示します。これで初心者と熟練者とを比べると、曲面の形や色の違いから、技能の違いが一目瞭然です。

職人や指導者の人手不足を解消

この技術は、製造業からも注目を集めています。製品の仕上げ作業など、人手による工程を担う熟練者と技能指導者が不足しているのです。この挙動曲面技術を使って職人の技能訓練を行い、作業ロボットを制御するためのデータとしても使う、などといった活用が見込まれます。
また、熟練者でも動作のばらつきがあることから、将来的には、大量のデータからAIで理想的な動きの挙動曲面を作成するなどの可能性も期待されています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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帝京大学 理工学部 データサイエンス学科(2025年4月開設) 講師 三橋 郁 先生

帝京大学 理工学部 データサイエンス学科(2025年4月開設) 講師 三橋 郁 先生

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設計工学、人間工学、教育工学

メッセージ

私の研究室では、学びたい気持ちと好奇心を大切にしています。学生には、解決したい問題は何か、どんなものをつくりたいか、自分で見つけてもらうようにしています。機械学習、VR、AR、画像処理、モーションキャプチャといった技術に、福祉、教育など解決したい分野を加えて、一見バラバラな専門性をどう結び付けたら問題解決につながるかを考えてもらっています。その結果、学生たちは、VRによる「作業場お片付けゲーム」や「3次元空間へのお絵描き」を開発したり、学会で賞をとったりと、いろいろな形で活躍しています。

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