SNSの写真を「盛る」のはなぜ? 「女性らしさ」を考えよう

SNSの写真を「盛る」のはなぜ? 「女性らしさ」を考えよう

世間受けがいい女子を演出

「男性を意識していない」という女性でも、インスタグラムを見てみると、アプリで目を大きくしたり、足を長く伸ばしたりする、いわゆる盛り写真を投稿していることがあります。おばあちゃんの米寿の誕生会の写真を載せるのは、もしかしたら、「家族に愛されている」「親戚と仲良くできる私は結婚候補として最適」という隠れたメッセージを発信しているのかもしれません。それは、一般に公表していない「裏アカウント」とは別の顔であることが多いでしょう。こうしたオンライン空間での女性らしさの表現を「サイバーフェミニニティ」と言います。なぜ無意識に「世間受け」を狙うのか、人間の心のメカニズムを考えてみましょう。

メディアからの影響

キャスターや街頭インタビューされる人なども含め、ニュース番組に登場する男女の比率は8対2という調査結果があります。テレビの中には男女の偏りがあり、ステレオタイプな価値観があふれているため、視聴時間が長くなれば視聴者のステレオタイプをより強固なものにしていくでしょう。
もちろん個人の心理状態を正確に調べるのは不可能ですが、一定の傾向があり、「ジェンダー」「万人受け」を意識した自己表現につながっていくと考えられています。個性をアピールしているつもりが、実は個性のアピールになっていないというインスタの事例は数多くあります。

「盛りすぎ」の境界線

多メディア時代となり、今後はテレビだけでなく、YouTubeやSNSなどメディア全般の利用時間との関連についても検討が必要です。インスタの写真の解釈や、その人がどのぐらい女性らしさを求めているかといった心理学的なインタビュー調査も合わせて展開すれば、「盛りやすい人」の傾向や「盛りすぎ」の境界線なども見えてくるかもしれません。研究が進めば、女性のアイデンティティの解明につながるでしょうし、より大きな視点で言えば、盛りすぎなくてすむ「自分らしさ」を楽しめる社会、性別や出自にこだわらない世の中の実現に貢献できるはずです。

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東京女子大学 現代教養学部 心理・コミュニケーション学科 コミュニケーション専攻 教授 有馬 明恵 先生

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社会心理学、社会学、マスコミ学

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メッセージ

ジェンダーは女性が学んでも、男性が学んでも面白い分野だと思います。「お姉ちゃんでしょ」「男の子なのだから」などと言われ、不満を感じた経験があるなら、その不満が学問の原動力になります。
心理学やメディア学からの切り口に限らず、ジェンダーが関わる学問を研究することにより、不満の原因解明や、社会構造の欠点を考えるきっかけになります。一人ひとりの「らしさ」を尊重する社会づくりに貢献できるかもしれません。自分のことや、社会のあり方を考えることができる学問です。

先生への質問

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東京女子大学はキリスト教精神に基づくリベラルアーツ大学です。現代教養学部に、人文系、社会科学系、理系にわたる6学科を擁し、全ての学生がワンキャンパスで学んでいます。専門の学びを深める中で、自らの立てた問を追求していくために、学問分野や学科を超えて学び、複合的な観点で物事の本質を捉える力を身につけます。2025年度からの学科再編により、経営・観光・環境分野を含む経済経営学科や、公認心理師資格に対応した心理学科、社会学・メディア情報・共生社会を幅広く学べる社会コミュニケーション学科が新設されました。