情報技術の発展がもたらした建築デザインの新しい可能性

情報技術の発展がもたらした建築デザインの新しい可能性

「建築」の世界の情報革命

コンピュータがない時代の建築物の設計方法は物理的で大掛かりなものでした。19世紀から20世紀にかけて活躍したスペインの建築家のガウディは、屋根や勾配のデザインをする際、上から垂らしたひもに重りをつけて、そのたるみの曲線を見て安定的なデザインを決めていました。コンピュータの導入が一般化し始めた1960年代からは、建築の世界でもコンピュータで設計するCADが浸透し始めました。面倒な計算や複雑なシミュレーションをコンピュータが受け持ってくれるようになったことでより手軽になり、設計者はデザインに集中できるようになったのです。

デジタルの中でのものづくり

「情報革命」によるデジタル化で、現代の私たちにはコンピュータという心強い相棒ができました。例えば、椅子を設計するときに、基本となる3本の線の入力と部材寸法などを設定すれば、コンピュータが三次元のイメージを提示してくれる支援ツールを使って、理想の形を探究することができたりします。また、コンピュータの性能も急速に上がっています。最近はデジタルでシミュレーションし設計したものを、紙媒体の図面を介さず加工・製造できるようになりました。デジタル化がもたらした恩恵は、ガウディからみると、きっと夢のような話でしょう。

建築の情報学へ

情報技術を導入した新しい建築の考え方を「建築情報学」といいます。19世紀の産業革命でガラスとコンクリートが工業的に作られるようになったことで、近代建築は大きな変化を遂げました。産業革命と同様に20世紀から始まる情報革命によって、建築がさらなる変化を遂げようとしています。コンピュータで設計されたものは、現実につくる前にほかの人たちとも仮想体験を共有し、デザインやその影響を検討できるようになりました。こうした新しい経験は、人々の建築に対する考え方にも大きな変化をもたらすでしょう。社会を基礎から支えている建築は、新しい要素を取り入れ、設計や建築の在り方も常にアップデートされているのです。

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豊橋技術科学大学 工学部 建築・都市システム学系 准教授 水谷 晃啓 先生

豊橋技術科学大学 工学部 建築・都市システム学系 准教授 水谷 晃啓 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

建築学、建築情報学

先生が目指すSDGs

メッセージ

「建築」は工学部の理系科目として扱われていますが、哲学や文学、芸術も関わってくる学問のため、卒業後の進路もとても広くなります。そして、建築は社会的な装置であり、人のためにあるものです。
建物でも街づくりでも、ひとつのモノをつくり上げるには、そこに住む人々との「対話」が発生します。また、建築は1人だけでつくることはできないので、さまざまな人との協力が必要となります。人や社会に関わることが好きなら、自分の想像したものを、みんなで協力しながらつくり上げていく「建築」が、向いていると思います。

先生への質問

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本学は、平成28年10月に創立40周年を迎えた工学系単科大学で、世界に開かれたトップクラスの工学系大学をめざしています。社会産業構造の変化、グローバル化時代に対応した人材育成の要求に対応するため、「基幹産業を支える先端的技術分野」と「持続的発展社会のための先導的技術分野」の2つの柱(5課程)で成り立っています。卒業生・修了生は「実践的・指導的技術者」として日本を代表する企業で活躍しています。