データ分析で見えてくる、「税金を払いたくない」企業の姿!?

データ分析で見えてくる、「税金を払いたくない」企業の姿!?

もしも会社が税金を払わなくてもよかったら?

日本では、仕事をして給与や報酬などをもらうと、金額に応じて所得税を支払う義務が生じます。企業も利益に応じて、会社の所得税にあたる法人税を払わなければなりません。しかし、実は明治初期に所得税が導入された時、法人税はまだありませんでした。この時、何が起こったかというと、商店などの個人の事業者が、会社つまり法人を設立する「法人成り」現象が増えたのです。個人のままだと所得税を払わなければいけませんが、法人だと税金を払わなくてもよかったからです。

企業や市場に影響を与える税金

また税金には、物を買った時に発生する消費税があります。消費税は、1000万円以上の売り上げのある企業が国に納めるルールになっています。そのため消費税を払わずに済む方法を考える企業も出てきました。わざと売り上げを1000万円以内に抑えようとする会社、また会社をいくつかに分割して、1社当たりの売り上げを減らそうとする会社などです。このように税制という政策によって、企業の形態や活動にゆがみを生じることがデータ分析から見えてきます。さらに税制は市場にも影響を及ぼします。例えば、温泉に入る時に支払う入湯税は100~200円ですが、もし2000~3000円もしたら温泉を利用する人が減少してしまうでしょう。

税制政策を1つの実験としてとらえる研究

そもそもなぜ税金が必要かといえば、国・政府が活動する資金を集めるためです。税金は道路を整備したり、生活に困っている人を助けたり、国民に役立つさまざまな活動に使われています。その中には戦車や武器を購入する軍事費なども含まれます。統計データなどを分析すると、「戦争が起きると、税金が上がる」という相関関係も見て取れました。このようにデータを活用することで、税制や政策を実験のようなものととらえて、企業や経済にどのような影響を与えているかを示唆することができます。また、それを税制改革に生かすことも可能なのです。

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大阪大学 経済学部 経済・経営学科 教授 恩地 一樹 先生

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メッセージ

お金は重要なものです。みんな、税金を多く支払うのが嫌なので、いろいろなことをしようとします。あなたが名前を知っている大企業も、節税のために企業合併を持ちかけるなどしています。そんな人間のドラマチックな行動をデータで見ることができるのが税制研究の面白いところです。
大学はそのように自分の興味のある研究対象を深く掘り下げて、考えられる場所です。今は受験勉強が大変かもしれませんが、学問の自由度が広がる大学で、ぜひ自分の関心のあるトピックを見つけて、掘り下げていってください。

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