住民の力がつくる、まちのかたち

考えるヒントとしての「米軍占領下の沖縄の自治」
琉球政府時代の沖縄の「水」「教育税」「石油製品」から考えてみましょう。水は、地域住民の貴重な財産です。しかし、第二次大戦後に米軍の統治下にあった琉球列島では、水は米軍の管理下にあり、水の供給は米軍基地を優先するという原則がありました。また、教育のために地域住民から徴収する「教育税」というアメリカの制度が導入されていました(運用がうまくいかず、後に廃止されています)。さらに、沖縄が本土復帰した後に「石油価格調整税」という税ができましたが、その誕生には、占領時代の経緯がありました。水の管理や教育税の廃止の経験、石油価格調整税誕生の秘話など、その地域の特性や、たどった歴史が色濃く反映されている地方の姿を見つめると、今を生きるヒントが得られます。
復興と自治
アメリカの統治によって、沖縄の地方自治のあり方は苦難の歴史を歩みました。東北の沿岸部は東日本大震災の復興期に大きな影響を受けています。震災復興として、津波被害を防ぐために海岸線に延々と防潮堤が建設され、海岸から高台への住居移転も進められました。震災後には「地域のニーズに合わせた復興」が盛んに強調されましたが、地域住民はもとの海辺での暮らしが失われることを望んでいたのでしょうか。「地域の状況に合わせた復興」は、復興の遅れている能登でもよく言われていますが、そこに地域住民の声がうまく反映されるのでしょうか。
住民の力を高める
災害復興だけでなく、自分たちが暮らしたいまちや環境を実現し、守り続けるためには、住民一人一人が日ごろから自分たちのまちについて考えて、その力を強めておかなければならないことがわかります。どこのまちに暮らしていても、そこには地方自治があり、その営みと無縁ではいられません。地方自治に不可欠な財源を支払ったり、さまざまな意見をもつ住民間で合意を得たりすることは、時に負担を伴います。しかし、これらは住民の義務であると同時に、自分が自由な市民であることの証でもあるのです。
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