チャンバラアクションから日本の文化が見える
チャンバラアクションの専門家
演劇・映画で主に刀などの武器を使ったアクションシーンのことを日本では殺陣(たて)と呼び、その殺陣の演技指導を行う専門職を殺陣師(たてし)と呼びます。殺陣師は監督と一緒になって場面の演出を考える場合もあれば、アクションシーンについては監督からすべて任される場合もあります。また、映画では殺陣が苦手な俳優の演技を編集でそれらしくしたり、着物を着慣れていない現代の若い俳優の動きを時代劇らしく見せたりすることも考えます。刀を持った侍が登場する映画では欠かすことの出来ない重要な裏方、それが殺陣師なのです。
チャンバラアクションも時代で変わる
チャンバラアクションの演出も、時代によって変化しています。歌舞伎や講談を題材にして映画が撮られた初期のころは勧善懲悪が基本で、正義の味方が悪役をバッタバッタと斬り倒し、着物が汚れることもありませんが観客は爽快感を味わっていました。だがリアリティに欠けると批判がされ、血しぶきが派手に上がるような残酷な殺陣が出てきました。これまで作られてきた映画群を網羅的にとらえて分析してみると、その映画が作られた当時の社会背景や興行的なニーズに合わせて、刀を使ったアクションの演出も変わってきたことがわかります。時代劇と一括りにせず、個々の作品を見ると各時代によって異なる時代背景・文化が反映されているのです。
映画を材料として日本文化を探る
映画研究では、著名な監督や作品が研究の対象となるのが主流です。しかし、B級映画と呼ばれて格下の扱いを受けてきた数多くの映画作品の中にも、その時代ごとの文化的なエッセンスが含まれています。例えば、殺陣の演出方法やセットの造形、登場人物たちの衣装、ロケ地の背景として映り込んだ街の風景などです。映画制作者たちの意図に関わらず、当時ならではの状況が映画には記録されています。こうした要素を拾い上げて、時代の変化を追いかけて縦断的に、あるいは同時代の中で広く横断的に調査することで、日本文化の一面が浮かび上がってきます。
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