行動経済学から見た、お金とうまく付き合うための金融経済教育

届いていない金融アドバイス
毎月のお金の使い方や、貯蓄や投資などに関するアドバイスは、金融に詳しくない人ほど必要とされるはずです。ところが現実には、そうした人たちは金融機関に足を運ぶことを、「難しいことはわからない」とためらい、「わからないから後回しにしよう」と考えてしまう傾向があります。反対に、金融知識が豊富で自信もある人ほど、積極的にアドバイスを活用します。
行動経済学で説明すると
伝統的な経済学では、「人は合理的に判断する」という前提がありました。しかし実際の人間の行動は、非合理的で感情や直感に左右されやすいものです。そこで登場したのが、心理学の知見を取り入れた「行動経済学」です。この分野では、損失を過大に恐れたり、自分に有益なはずのアドバイスを避けたりする行動の背景を理論的に説明できます。
金融アドバイスの受け止め方も、知識と自信の関係性に着目すると、「知識があり、自信もある」人、「知識はあるのに、自信がない」人、「自信はあるけれど、実は知識が伴っていない」人、「知識がなく、自信もない」人の4つのタイプに分類されます。この中で最も支援が必要なのは「知識がなく、自信もない」タイプの人たちですが、そのタイプこそが、最も金融教育やアドバイスから遠ざかってしまうのです。
金融経済教育を広げるために
日本では、2022年から高校の家庭科で金融教育が始まりました。ただし調査によれば、「金融教育を学校で受けたことがある」と答えた人はまだ7%にすぎず、金融に関する知識も自信も持ちにくい状況です。そこで近年では、学校に金融アドバイザーを派遣したり、誰でも気軽に使える学習ツールの整備が進められています。具体的には、特定の金融機関に所属しない独立系アドバイザーの認定制度を設けたり、AIを用いたロボアドバイザーを普及させたりすることで、金融経済教育のすそ野を広げているのです。知識と自信を持った上でお金と向き合えるような社会の実現のために、行動経済学の知見を取り入れた金融経済教育が進んでいます。
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名古屋商科大学経済学部 経済学科 准教授西出 陽子 先生
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