国際社会の正義を実現するグローバルガバナンス

国際社会の正義を実現するグローバルガバナンス

国際社会の正義とは

正義とは、簡単に要約すると「人と人との関係が正しく取り結ばれていること」です。世界を見ると、8億人以上が飢餓に苦しんでいる一方で、先進国を中心に年間約13億トンの食料が廃棄されています。たまたま貧しい国に生まれた人は貧しい生活を強いられ、豊かな国に生まれた人は富を享受しています。国際社会の仕組みを通じて利益や不利益が生まれる、歪んだ関係ともいえるでしょう。
これを是正するために、貧困や飢餓をなくすことなどを目的とするSDGs(持続可能な開発目標)が国連サミットで採択され、国際社会がこれに取り組もうとしています。

タックスヘイブンによる日本の損失は消費税2%分

さらに今、国際社会で注目されているのが、「タックスヘイブン(租税回避地)」の問題です。大手企業や裕福な人が自国への納税から逃れるために、法人税や所得税などの税率がゼロか極めて低い国へと資金を移動しているのです。タックスヘイブンによる日本の税収の損失は、5兆円にのぼるといわれ、消費税2%分ほどに相当します。庶民や中小企業は税金から逃れられずに正直に払っているのに、富裕層や大手企業の一部は税逃れをしているのが現実で、一部の裕福な人ほど有利になる社会なのです。

国境を超えて解決するグローバルガバナンス

こうした税源浸食と利益移転の問題を解消すべく、国際社会は「BEPS(ベップス)プロジェクト」を立ち上げて、対応しようとしています。これにより、資金を貧困や飢餓を抱える国への支援に使うことも可能になります。
国際的な課題は、これに限りません。例えば、利益を生む先進国の医療技術や医薬品の開発は積極的に行われますが、利益にならないアフリカの風土病には目も向けられていません。先進国が地球環境を汚染し、貧しい国が被害を受ける構造もそのひとつです。こうした、国境を超えた「人と人との関係」が正しくあるために、問題を解決するグローバルガバナンスがますます重要な時代となっています。

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名古屋市立大学 人文社会学部 現代社会学科 教授 伊藤 恭彦 先生

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AIの時代を迎えた今こそ、「人文社会科学」は重要です。人文社会科学は、人間とは何か、人の生き方や考え方、社会とはどういうものかなどについて考える学問です。テクノロジーにのみ込まれることなく、これからの社会を自分らしく生き抜くには、ますます必要になってくるでしょう。人間と社会を深く理解し、「未来をつくるのは自分たちである」という認識を持つことが人文社会科学の領域です。変化に柔軟に対応するための知恵と新しい行動を生み出す力となります。
自分の未来を考えるときには、人文社会科学にも注目してみてください。

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