観光地の混雑解消のヒントは流体力学にあり? 人流モデルの研究
人の動きもわかる流体力学
流体力学は空気や熱などの流れを扱うイメージが強いかもしれませんが、人の移動に対しても応用できます。流体力学とは、かたまりの動きを把握する分野です。空気などを扱うときも、ある程度のかたまりだと考えて全体的な動きを追跡しています。人に対しても集団になったかたまりを追跡することで、移動の流れを可視化できます。例えば観光地における人の動きも追跡や予測が可能です。そうすると、観光地の混雑解消につながるほか、地元住民の生活が観光客の移動によって不便になる事態を回避できると期待されています。
意志を反映する難しさ
しかし、流体力学で人流を追跡するには難しい点もあります。人には意志があり、「混んでいるから別の道を使おう」など思い思いの方向に進むからです。通常の流体力学には安定状態というものがあり、熱などが特定の原理にしたがって動くことがわかっています。一方で人の場合は普遍的な原理がありません。だからといって意志の影響を無視してしまうと、現実とはかけ離れたモデルになってしまいます。
SNSを活用したデータ収集
流体力学では、かたまりの動きに影響を与える外からの力を考慮することがあります。同じように人の意志を外の力として方程式に組み込めば、人流の追跡に役立つと考えられます。人の意志を知る手段のひとつが観光地に関するSNS投稿です。観光客の投稿、観光地が発信するイベントの告知などを参考にします。もし魅力が伝わるような投稿が多ければ、人の流れがその観光地に引き寄せられるはずです。このようなリアルタイムに発信される情報を人流モデルの方程式に追加しようと、研究が行われています。ただしSNSの投稿をやみくもに与えてもモデルの精度が上がらないため、統計処理の手法を使って人流に影響を与えそうな情報だけを抽出します。
このように統計処理と流体力学を組み合わせることで、これまではできなかったリアルタイムな人流予測が可能になるかもしれません。
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金沢大学 融合学域 観光デザイン学類 助教 和田 啓吾 先生
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