イヤホンのイメージといえば? 概念の変化とイノベーション
概念とは何か
人は自分の目で見て、目の前のモノを認識しているように思われます。しかし、意外にも目からの情報は10%程度しか使われていないことが明らかになっています。では、残り90%はどこからきているのでしょうか。それは、「概念」だと言われています。概念とは対象に抱く大まかなイメージのことです。例えば、スマホといえば、手のひらサイズの液晶で、手で操作するものというイメージがあるでしょう。概念をもとに物事を認識しているため、動いていないエスカレーターに乗ると違和感を感じるように、イメージから乖離するものに大きな違和感を覚えます。
イノベーションによって変化する概念
概念を狙い通りに変化させることができれば、商品開発や生活を幸福にするための取り組みなど、あらゆる場面に役立つと考えられます。例えばイヤホンなら、もともと「音楽を聞くための道具」というイメージが主流でした。しかしノイズキャンセリング機能付きのワイヤレスイヤホンなどのイノベーションが登場すると、イヤホンは「音声を聞くため、人と話すための道具」というようなイメージに変わってきました。するとイアホンは、音質を上げることより、音が途切れず遅延が起こらないことが大きな価値をもつことになります。他方で、音の遅延に対して強烈な違和感を感じるようにもなります。このようにイノベーションによって人々の概念を変化させることができれば、同時に企業の競争環境も変化させることができるでしょう。
概念の研究とデータサイエンス
概念の変化の仕組みを明らかにする研究はまだ発展途上です。現状だと実験やシミュレーションを使った研究が主流です。人の選択行動に関する数理モデルを作り、実験から得た選択行動のデータや心拍数などの生理信号データの変化をうまく説明するパラメータを機械学習などの手法で推定します。このように概念の研究は、さまざまなデータを使い、最新のデータサイエンスの手法が使われるエキサイティングな分野でもあります。
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先生情報 / 大学情報
一橋大学 ソーシャル・データサイエンス学部 ソーシャル・データサイエンス学科 准教授 永山 晋 先生
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