農業は、自然を大きく改変した人類最初の営みである

農業は、自然を大きく改変した人類最初の営みである

農業は我々の祖先が長い時間をかけて作った

農業は1万年くらい前に、世界の数カ所で始まったと考えられています。それまでは人類は自然の植物の実りや動物の行動を熟知して、自然の恵みを最大にひきだす採集狩猟の生活をおくっていました。ところが、農業が始まると、自然への働きかけを強めて、人間に都合のいい植物や動物を増やすために、農地を切り開き、川から水路を引くなど、周りの環境を変えていったのです。
私たちが映画やアニメ-ションで、自然と調和したように見える1960年代以前の農村の風景も全くの自然ではありません。しかし、こうした農業や暮らしは、私たちの祖先が自然と対話しながら、長い時間をかけて作り上げたものだからこそ、例えば、日本のお米作りは2000年も続けてこられたと言えるでしょう。
21世紀に人類が生き残っていくためには、環境問題は解決すべき最大のテーマといわれていますが、農業には、こうした成り立ちから、環境と調和するさまざまなノウハウが蓄積されていると言えるでしょう。

過去の農業からのメッセージ

自然には、変化を和らげる力があります。しかし、そのために、環境に悪い影響を与えるものであっても、それが私たちの目に見えるようになるには数十年の時間がかかることも珍しくありません。農業でも、私たちがよく知る農薬や化学肥料の影響が、広く認識されるようになるまでには、20年くらいの時間がかかったのです。
こうした過ちを繰り返さないためには、過去の農業を調べ、失敗も含めて私たちの祖先の経験を学ぶことも必要です。稲作については、過去の土を分析することで、環境に適応力の高いイネが栽培されていたことや生産性を高めるために水田の場所を変えていったことなどがわかってきています。こうした中には、私たちが、これからの農業や地球環境を考える上でのヒントも隠されているはずです。

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先生情報 / 大学情報

宮崎大学 農学部 附属農業博物館 教授 宇田津 徹朗 先生

宮崎大学 農学部 附属農業博物館 教授 宇田津 徹朗 先生

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メッセージ

人口爆発による食糧不足や地球温暖化などによる環境の激変などが叫ばれる今、21世紀も人類が地球上で生きていくためには、環境と調和した農業の確立が不可欠です。そうした意味で、農学は21世紀の最もトレンディーな学問といえるでしょう。また科学技術が発達した現在でも、農業は地域の環境に応じて植物の力を最大限に引き出す伝統的な技術の上に成り立っているのです。さらに工業製品とは異なり、社会システムなどに大きく左右されますので、生物に興味を持つ人はもちろん、社会への関心の強い人が農学に向いていると私は考えます。

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宮崎大学は、「世界を視野に、地域から始めよう」のスローガンのもと、人的・知的・物的資源を共有し、機能を相補します。(1) 教養教育の一層の充実と質的向上、(2) 教育・研究基盤の強化、(3) 学際領域の教育・研究の強化と創出、(4) 地域および国際社会への貢献、を具体的な目標として、21世紀を展望しつつ、知の創造の殿堂として、活気に溢れ、魅力に満ちた学風と輝くキャンパスを築きます。また、地域と連携して宮崎の文化と風格を高めることを目指しています。