子どもも教員も幸せな「インクルーシブ教育」を実現するには?
インクルーシブ教育と人材育成
2000年代から、障害の有無にかかわらず多様な子どもたちが同じ場で学ぶことをめざす「インクルーシブ教育」が世界的に導入され始めました。日本でもインクルーシブ教育を推進するために教育制度の改正などが行われています。また人材育成のため、文部科学省は2022年に、すべての教員に対して採用後10年以内に特別支援教育を最低2年間担当することが望ましいとの報告書を出しました。ただしそれに従うと、スキルや知識が十分ではない教員が特別支援教育を担当するケースがでてくることが心配されます。子どもたちのためには、教員の力量を向上させるためのさまざまな取り組みが必要です。
研修を充実させる
例えば特別支援教育を担当する教員に向けた研修プログラムでは、当人のほかに、複数の分野の専門家や、過去に研修プログラムを受講して現場で経験を積んだ教員がチームを組みます。ただ話を聞くだけでは知識が定着しないので、特別なニーズを持つ子どもを想定し、指導計画案の作成を行います。その計画案に対して実際に現場で使われている方法を共有し、さらに専門家が科学的な裏付けをして評価します。このような取り組みが全国的に広まれば、地域の中で自主的に研修をして教員の力量を向上させることが期待できます。
適切な評価や配慮も必要
また、インクルーシブ教育で子どもたちや教員を支えるために、授業内での適切な配慮や新たな評価方法などの研究も求められています。例えば、特別支援教育の専門家と関連する複数分野の専門家家が共同で始めた「インテンシブ・ニーズ」の研究があります。授業中に医療的なケアが必要であるなど、より大きな特別なニーズのある子どもが教育に参加するための方法や仕組みを考えるのです。そのほかにも、知的障害があるなど、学習困難の度合いが大きな子どもたちの教育を学力以外の指標でも評価できないか検討しています。教育の中で一人ひとりが自分の価値を実感して幸せを感じるためにも、こうした研究が必要なのです。
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筑波大学 人間学群 障害科学類 教授 米田 宏樹 先生
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