コミュニケーションに困難を感じるのはなぜだろう?

コミュニケーションに困難を感じるのはなぜだろう?

コミュニケーションの難しい部分は?

自閉スペクトラム症(ASD)の特徴として、「コミュニケーションの困難さ」という項目があります。他者の考えていることや感じていることを理解し、自分のことを伝える、そういったことがなぜ難しいのかは十分にわかっていません。コミュニケーションに必要な認知機能と発達障害との関係を詳しく調べようと、さまざまな研究が行われています。

視線への反応を調べる

他者との視線のやり取りはコミュニケーションの重要な機能です。他者の視線への反応を調べる実験では、モニタに顔写真と物体を表示し、参加者には物体があると気づいたときにボタンを押してもらいます。物体は顔写真の視線の方向、もしくはその反対側に出るよう設定されます。一般的には視線の先に物体があれば、ボタンを押すまでの時間が短くなります。物体が視線とは逆にあると、視線の方向に注意をむけてしまい、物体に気づくのが遅れてボタンを押すまでの時間が長くなります。さらに視線をモニタに表示する時間の長さに変化をつけて、同様の実験が行われました。

違いが見られるのはどんなとき?

実験の結果、ASDの有無に関わらず、視線と同じ方向に物体があれば反対方向にある場合と比べてボタンを押すまでの時間が短くなりました。ただし、数十ミリ秒のように、瞬時に顔を映すだけで意識的に視線に気づけない場合の反応には違いが生じました。ASDのない人は表示時間が短くなっても視線の方向に注意をむけますが、ASDのある人は視線への反応が見られませんでした。視線に気づいている場合にその方向に注意を向けることはできても、そうでない場合に反応することは難しいと考えられます。
社会生活では短時間の反応が求められる場面もあるため、ASDのある人はこうしたときにコミュニケーションの難しさを感じている可能性があります。研究が進んで原因などが明らかになれば、周囲が適切な接し方を考えることができ、ASDのある人も助けを求めやすくなるかもしれません。

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先生情報 / 大学情報

筑波大学 人間学群 障害科学類 准教授 魚野 翔太 先生

筑波大学 人間学群 障害科学類 准教授 魚野 翔太 先生

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認知神経科学、実験心理学、特別支援教育

先生が目指すSDGs

メッセージ

障害がある人を支援する方法のひとつが、科学寄りのアプローチで障害への理解を目指す「研究」という道だと思います。例えば実験をうまく組んで心の機能をさまざまな角度で見ると、新たな視点から障害を理解ができることがあります。普通だと思っていることや、普通ではないと思っていたことが実はそうでもなかった、と気づくときもあるでしょう。すると今までは「自分とは違う」と思っていた人への認識も変わります。そこが魅力で私はこの分野の研究者になったので、あなたにもぜひ知ってもらえるとうれしいです。

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筑波大学は、我が国を代表する研究機関集積地の筑波研究学園都市の中核を占める総合大学です。東京教育大学の伝統を受け継ぎ、柔軟な教育システムと専門分野を備え、学際性を重視しています。「学群・学類」制による学部段階教育、全教員の大学院所属による研究の重視、学生宿舎や課外活動など充実した学生生活支援などが特色です。今や“Tsukuba”ブランドは, 研究成果とともに国際的にも高い評価があります。