伝統だけじゃない、現代を生きる宗教を学ぶ

信仰と生き方について考える学問
世界にはヒンドゥー教や仏教、イスラム教やキリスト教などさまざまな伝統宗教があります。宗教は、人々がものの考え方や生活のリズム、あるいは社会の枠組みなどを形成する上で、とても大きな影響を与えてきました。宗教学という学問の内容は多様ですが、聖典を読み解いたりフィールドワークを行ったりしながら、神話や死生観等の思想、儀礼や祭りなどを調査し、宗教とは何かを理論的にとらえていこうとする研究があります。
伝統的な宗教行事を活用した活動
ヒンドゥー教徒が多いネパールでは、毎年8月に「ガイジャトラ」という葬礼儀式が行われます。儀式は午前と午後に分かれており、午前中は死者の魂を死の神であるヤマ神に送り出すために、牛を装った子どもを先頭にして行進します。午後になると多目的な行進に変わり、儀礼の形を借りて政治批判をするなど、さまざまな集団がそれぞれの主張について声をあげていきます。
フィールドワーク調査によって、その午後の部における性的マイノリティたちの活動が知られるようになりました。偏見や危害にさらされているネパールの性的マイノリティたちは、伝統的な宗教儀式の枠組みを用いることで自分たちのセクシュアリティを主張し、性的マイノリティを受け入れる社会づくりをめざしているのです。このように、伝統的な宗教行事を現在に生かす活動も行われています。
無宗教は世界的にはマイノリティ
日本人の多くは宗教にはあまり関心を持たず、無宗教を名乗る人は少なくありません。ところが世界的にみると、こうした態度は決して主流ではなく、統計によると自分を宗教的な人間だと考えている人の割合は60%を超えています。グローバル化が進む社会の中では、宗教についての知識や理解をもつことはとても重要です。自分が特定の信仰をもつかどうかとは無関係に、宗教について学ぶことは異文化理解の助けになるものです。
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先生情報 / 大学情報

広島大学総合科学部 総合科学科 教授杉木 恒彦 先生
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