夢を読み解く なぜ追いかけられる夢を見るのか
夢はこころが作る物語
高校生の頃は誰もが、自分が何者かを考える時期です。思うように生きられず、自分を見失うような苦しみに対して、カウンセリングという臨床心理学理論による心理支援があります。カウンセラーとの対話により、より生きやすくなるために気持ちを表現し自分を理解します。その中で描画や箱庭療法、夢分析など非言語的表現を用いるものがあります。たとえば夢は、寝ている間に脳が記憶を整理する作業過程で生まれ、夢を見る人のパーソナリティや経験、現在の状況などに関連した内容になっています。臨床心理学では、こころの理解を助ける素材としての夢にダイブして解釈を深める技法などを学びます。
人間関係理解のための新たな視点
夢で、母親があなたににこやかにケーキを勧めながら、「でも太ってきたからやせなきゃね」と言ったとします。食べるかどうかと混乱しますね。夢では好きな人物が敵対的な態度になったり、反対に嫌いな相手と仲良くなっていたりすることがあります。カウンセラーは、来談者(クライエント)に「それはなぜだろう」と問いかけながら、一緒に夢を紐解いていきます。夢を鵜呑みにして、実は母親は意地悪なんだと理解するのではなく、夢にダイブして感情を感じることで、母親との関係性をより広い視野でみつめ直し再構築することができます。つまり夢のメッセージを受けとることにより現実の人間関係の可能性が広がるのです。
追いかけてくるのは何?
また、「何かに追いかけられる夢」を見ることはありませんか? とても嫌な気持ちになりますが、この夢を作り出しているのも自分のこころです。「未知の自分」からのコンタクトかもしれませんし、童謡「森のくまさん」のように落とし物を届けてくれるのかもしれません。逃げずに振り向いて「何か?」と聞いてみましょう。このように自分のこころから生まれる夢(物語)を受け止めて、カウンセラーと一緒に夢のメッセージを読み解くことで新たな可能性を見つけ、生きやすくなる、それが臨床心理学実践における夢の理解・利用法です。
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先生情報 / 大学情報
東洋英和女学院大学 人間科学部 人間科学科 教授(学部長) 前川 美行 先生
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