講義No.12669 機械工学

事故を防ぎ環境保護に貢献する「機械振動」の研究

事故を防ぎ環境保護に貢献する「機械振動」の研究

「振動」は機械力学の重要な分野

私たちの身の周りでは、たくさんの「振動現象」が起きています。機械や装置の振動は正常に動作している証でもあります。一方で、起きてほしくないところで振動が起きて、不快に感じたり、体調が悪くなったりすることもあるほか、機械の性能発揮の妨げや重大なトラブルの原因となることもあります。そのため、振動は機械力学の重要な分野となっており、工作機械の振動低減をはじめ、さまざまなテーマに大勢の研究者が取り組んでいます。

ダムの水門が突然壊れた原因は?

1995年にアメリカのダムで、100トン近くある巨大な水門が突然崩壊する事故が起きました。地震などがあったわけではありません。事故の再発を防止するための研究により、水を支える水門の鉄の扉が流れの方向に周期の長い振動が発生することがわかりました。また、鉄の扉を吊るワイヤーがバネの作用をするため、吊られた方向にもゆっくり揺れます。水を流す開度や上流側水位などの条件が揃うと、2種の振動が同じような周期になり、共振が起こります。そのエネルギーが崩壊の原因だったのです。研究は理論と実験の両面から進められ、実際の水門でも実験が行われました。事故防止対策も研究され、各地の水門の強化改善に生かされています。

環境負荷の低減に貢献する

もっと身近な振動の研究例として、エアコンの圧縮機の研究を紹介しましょう。環境保護のために、エアコンの冷媒ガスを環境負荷の少ないものに変えることが必要とされています。ただし、代替の冷媒ガスでは従来同様の性能が得られなくなります。そこで、環境負荷の少ない冷媒ガスを使っても性能が高く、摩擦や振動の少ない圧縮機が研究されています。冷媒ガスを変えるとオイルも変えなければならず、オイルが変われば機械の摩擦も変化するため、摩擦を少なくすることがこの研究のポイントです。この研究の成果は、冷蔵庫をはじめ、ヒートポンプを使うほかの家電製品にも応用でき、環境負荷の低減に大きく貢献することが期待されています。

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大阪電気通信大学 工学部 機械工学科 教授 阿南 景子 先生

大阪電気通信大学 工学部 機械工学科 教授 阿南 景子 先生

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機械力学、機械工学

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メッセージ

いろいろなことに興味を持ち、よく見て考えてみてほしいと思います。例えば、日常生活の中で、気になる音が聞こえることはよくありますよね。耳を澄ませて、その音がどこで鳴っているのか、なぜこういう音がするのか考えてみましょう。自然現象でも身近な機械でも、しっかり観察することで、自分の興味があるところが見つかるかもしれません。情報収集や勉強も同じです。その時は直接関係ないと思っても、後々役に立つことも大いにありますから、幅広く関心を持ち続けてください。

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本学は工学を中心に建築、情報、医療技術、リハビリ、スポーツ、ゲーム、デザインなどの学科/専攻を設置している「技術系総合大学」です。在籍学生数は大学院を含めて約5,887人(2023年5月1日現在)。高度なモノづくりができる「実践型教育」理念のもと、社会で実際に役立つ技術と知識修得をめざします。「3D造形先端加工センター」などの最先端設備や「資格学習支援センター」によるサポート体制が就職率の良さに繋がっています。また、2つのキャンパスは京都や兵庫近辺からのアクセスの良さも魅力の一つです。