「したいからする」VS「させられてする」
自発的と強制的、どっちがいい?
部活動や体育の授業で強制的に走らされて、もう運動したくないと感じたことはありませんか。反対に、タイム更新などの自身の目標があれば、もっと走ろうという気分になるかもしれません。
運動は、やる気を引き起こす脳の「報酬系」に作用すると考えられますが、強制的な運動と自発的な運動で運動効果に違いは生じるのでしょうか。ラットを用いて、脳の神経細胞レベルで違いがあるのかを科学的に調べる実験が行われています。
強制的に走らせた個体は、活発じゃなくなる?
ラットの実験では、回し車を使って1日24時間好きなときに自発的に運動させるグループと、回し車から出られないようにして強制的に運動させるグループ、全く運動させないグループに分けて、それぞれ4週間過ごさせました。
4週間後、それぞれのグループの不安感情を測定するためにオープンフィールドテストと呼ばれる試験が行われました。動物(齧歯類)は慣れていない環境では壁に沿って進む習性があります。環境に慣れてくると中央部分に出てくる時間(=不安感情の減少を示す)が増加します。しかし、強制的に運動させられたグループは他のグループに比べて長い時間、隅にとどまっていました。また、脳内の神経伝達物質を調べたところ、自発運動のグループは心の安定に関与するセロトニンが大きく増加していることがわかりました。
これらの結果から、強制運動と比較すると自発運動の方が、精神的に有益である可能性が考えられました。
やる気を下げない体育・スポーツ教育を
今後は、自発運動と強制運動を組み合わせた場合の運動効果を調べて、やる気との関係を考察するとともに、運動中の脳内神経伝達物質の測定実験も進められています。
ラットの実験からは、少なくとも精神面においては自発的な運動がよいといえそうです。自発的、強制的な運動の効果が科学的に明らかになれば、やる気を下げないスポーツ教育や体育教育につながるメッセージ性をもった結果が得られることが期待されます。
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